池の活動終了

分解したドームカゴ

ひょうたん池に設置していた遮光ドームカゴ3基と、その他の池に設置していたオダアミ計3基を撤収して、今年の池の保全活動を終了しました。毎年、ドームカゴでザリガニが1匹も獲れない日が2日続いたら活動終了と決めています。例年の終了時期は12月初めのことが多いのですが、今年はワナの数が少ないこともあって、3回捕獲ゼロの日が続いたので、11月4日でひょうたん池のワナを陸に上げました。今日はそれらを分解し、池にまだ設置してあったオダアミもチェック・回収して、漁具物置に運びました。

今年のザリガニ捕獲数は計 431匹でした。ちなみに、2019年度は 744匹、2018年度は 2,140匹、2017年度は 4,680匹です。実施回数もワナの数も違うので単純な比較はできないのですが、継続的にワナチェックに参加し、ザリガニが活動する夜の池のようすも観てきた私の感覚では、今年は昨年よりさらに減ったと感じています。(ただし、我々より遅く活動を開始したかいぼり隊の人は、昨年より多く獲れると言っていました。) 一時期はひょうたん池だけで5千匹以上も獲れた年があったのと比べると、大幅に減ったのは間違いありません。

井の頭池でアメリカザリガニが激増した理由は、天敵だったオオクチバス(ブラックバス)をかいぼりで一掃したからでした。それが再び減少した理由は、ボランティアによる駆除活動と、天敵となる在来の生き物(サギ類、カイツブリ、ナマズなど)の増加だと考えられます。現状は低密度抑制ができていますが、池にはまだ回復可能な数が生存しているし、神田川に多数生息しているものが遡上してくるので、再び増えないように駆除活動は来年以降も続けるべきと思います。

当会の池の活動は、ザリガニ駆除のほかに、池の生き物のモニタリングをするという目的もあります。今年が昨年までより大きく変わった点のひとつは、一昨年はクロダハゼ稚魚、昨年はウキゴリ稚魚が大発生したのに、今年はモツゴ稚魚の発生が多かったことです。かいぼりで破壊・撹乱された生態系がバランスを取り戻しつつあるのだと思います。在来種のヌカエビが、ひょうたん池でも多数獲れるようになったのも今までなかった変化です。池に水草が増えたことが影響しているようです。ただし、外来の侵略的水草コカナダモが激増したのは問題です。かいぼり隊がコカナダモの駆除に取り組んでくれているので、期待しています。(トシ)

記録に残らない魚

今朝のザリガニワナ(遮光ドームカゴ)にオイカワのオスの成魚が2匹入っていました。どちらも見事な婚姻色が出ているオスで、記憶に残る美しさでした。写真はそのうちの1匹です。オイカワが獲れたことはほとんど無く、過去にはたったの2回、稚魚が獲れたことがあるだけです。その状況は他の活動でも同様で、かいぼり隊が100基以上設置しているザリガニ捕獲用のドームカゴでも、魚類調査用の張り網でも、ほとんど獲れた記録がありません。

それほどオイカワは少ないのかと思うかもしれませんが、そんなことはなく、かいぼりで水質が良くなった井の頭池に神田川から遡上してきて、今は多数生息しています。池をよく観ていれば、水面近くを群れで泳ぎ回り、水面の虫を盛んに食べているオイカワを見ることができます。

要するに、現在使われているワナはオイカワの習性に合っていないため捕まえることができないのです。ドームカゴはアメリカザリガニを駆除するのが目的ですから獲れなくても問題ないのですが、もしオイカワの生息数を推計する必要があるなら、別の手段が必要です。もしかすると、本当はいるのに、人目につかず捕獲もできないせいで、井の頭池にはいないことになっている別の生き物がいるかもしれません。

ところで、そんなにワナに入らないオイカワがなぜ2匹も同時に入ったのかですが、繁殖期を迎えて他のオスへの対抗心が増した2匹が争っていた拍子に、ワナの中に入り込んでしまったのではないかと想像しています。(トシ)

侵略的外来水草

かいぼり後に絶滅危惧種の水草ツツイトモが生えてきて、昨年はそれが水中や水面に茂るようすがまるでモネの池ようだと評判になりました。今年は新型コロナウイルス感染症のせいで、その光景を見られなかった人が多いと思います。ツツイトモは今年も元気ですが、じつは、多くの人が気づいていない間に、大変な事態が池の中で進行しています。繁殖力が強力な外来水草、コカナダモがどんどん増えているのです。それが増えると、ツツイトモが生育場所を奪われて減ってしまうでしょう。もっと貴重だと多くの人が思っているイノカシラフラスコモは再び消えてしまうかもしれません。コカナダモは以前から見つかっていますが、業者や井の頭かいぼり隊などが見つけるたびに駆除してきたので、在来の水草が守られていたのです。

七井橋から見たコカナダモ

人間が活動を自粛している間に、コカナダモは池の中にどんどん広がりました。七井橋から近くの水中を見ると、コカナダモが繁っているのが見えます。日本に来たコカナダモは種子を作りませんが、切れた茎が流れ着くと根を出して定着し、どんどん増殖します。5月には、今まで生えていなかった神田川の上流部にも定着しているのを見つけました。

ひょうたん池で駆除したコカナダモ

ひょうたん池にまで生えていることに昨日気づいたので、今日除草をしました。しばらく前までは同じ場所にツツイトモが生えていたのに、すっかりコカナダモに置き換わっていました。定着後まだ間もないので、量はわずかでしたが、切れ藻が次々に流れて来るので、再び定着するでしょう。流れのある場所での駆除は上流側から進めるのが基本です。新型コロナウイルス感染症が早く収束して、池を守る活動に多くの人が取り組めるようになってほしいものです。

コカナダモの繁殖力の凄さを考えると、すでに完全駆除は無理なのかもしれません。戦後間もない井の頭池は水が澄み、水草が繁っていて美しかったそうですが、じつはその多くがコカナダモやオオカナダモだったという話を聞いたことがあります。コカナダモも茂ればそれなりに綺麗ですが、モネの池には見えないと思います。

池の活動終了

オダアミを洗う

寒くなりザリガニがほとんど入らなくなったので、今日の活動で、ひょうたん池のドームカゴ(ザリガニ捕獲用ワナ)と、生き物モニタリング用に池の複数箇所に設置してあったオダアミをすべて撤収しました。

オダアミは水道や池の水で洗い、きれいに汚れを落としました。

ドームカゴを洗う

ドームカゴは解体し、神田川の源流部できれいに洗いました。オダアミもドームカゴも、長期間水中に浸かっていたので、藻や泥がびっしりと付着しています。ブラシで擦ってきれいに洗い流してから、漁具物置に運びました。

これで今年の、ワナを使用する池の活動は終了です。今年のザリガニ捕獲(駆除)活動は次の結果でした。

【2019年度ザリガニ駆除活動結果】
活動回数(実施日数):計162日 うち全体活動39日、朝のワナ上げ123日
駆除数:計744匹 うち全体活動211匹、朝のワナ上げ533匹
これは、2018年度より約3割増ですが、2017年度と比べると5分の1以下です。

ザリガニの稚エビ

今日のワナ上げでは、ドームカゴでザリガニ成体が1匹獲れたほか、オダアミに沈んでいた落ち葉の中から4匹のザリガニの稚エビが見つかりました。ザリガニは来年に向けて、着々と復活の準備をしているのです。来年も防除活動の手を緩めるわけにはいかないようです。ワナの再設置は4月の予定です。

湧水の影響

生き物の生息状況を調べるため、「オダアミ」という特製の網を池の数カ所に設置して、採れる生き物を記録しています。ワナというより休憩所で、出入り自由ですが、小魚やエビ類がよく入ります。ひょうたん池のドームカゴ(ザリガニワナ)にはザリガニ以外も入るので、それもモニタリングに役立ちます。

ヌカエビ  10月23日

大量の湧水が復活した後の10月23日、そのオダアミにヌカエビが今年初めて入りました。昔の井の頭池には大量にいたという在来エビですが、近年はほとんど見られなくなっていました。住処となる水草の消失、天敵となる外来魚の増加、競合する外来エビの増加などが激減の原因と考えられています。

オダアミで採れたヌカエビ  10月28日

ひょうたん池で獲れたザリガニ  10月18日

その後、採れるヌカエビの数は増え、オダアミだけでなく、ひょうたん池のザリガニワナにも入るようになりました。池の上流域でツツイトモなどの水草が復活したため、ヌカエビも生息数を増やしていたようです。水草が枯れる時期に大量の湧水が出たため、多くのヌカエビが切れ藻と一緒に下流へと流されてきたのだと想像しています。

湧水の影響と言えそうな変化はまだあります。ひょうたん池のワナに入るアメリカザリガニの数とサイズが急に3割ほど増えたのです。この時期にしては、例年よりも多いです。池から下ってきたのか、それとも神田川から遡上してきたのか不明ですが、私は後者だと考えています。池では井の頭かいぼり隊が継続的なザリガニ駆除活動をしているのに対して、野放しの神田川には今も大量のザリガニが生息していること、そして大量の湧水を神田川に流すため、池と川の境の堰板が全部外されていることが、そう考える理由です。

ドームカゴに入っていたギンブナ  11月17日

その後、湧水の量は次第に減ってきましたが、地下水汲み上げポンプは止めたままなので、池の水深が徐々に浅くなってきました。11月中旬ごろから起きているのが、ひょうたん池のザリガニワナに多数のギンブナが入る現象です。鱗が取れやすいフナが水深の浅いワナに入ると暴れて傷つくので問題です。水深が浅くなったからか、それとも水が澄んで見やすくなったからか、急に数を増したカワウがフナを追い回すので、ひょうたん池に逃げてくるのかもしれません。

調査用のワナを設置してモニタリングしていても、見えるのは池の真実の一部に過ぎません。しかし、池に何か大きな変化があると、その影響を受けて生き物たちの動きが普段とは変わり、見えなかった真実がちらりと見えることがあります。

湧水の変化

台風19号の豪雨は各地に大災害を及ぼしましたが、幸い井の頭公園には大きな被害がなく、井の頭池の湧水が復活するという良い効果も見られました。以下の写真は池の水が神田川に流れ出す堰のものです。我々は「水門橋堰」と呼んでいます。池のモニタリングの一環として、アメリカザリガニ駆除活動(ワナ上げ)のついでに写真を撮っています。井の頭池は神田川の源流なので、この堰から流れ出す水の量や質が神田川にとって重要です。そしてそれを見れば、井の頭池の状態もかなり分かります。

2019年10月11日の水門橋堰
10月11日(台風前日)の水門橋堰

左は台風19号が来る前日の写真です。池の水位を変えるための高さ10cmの堰板が2段取り付けられていました。また、この時までの池にはポンプで汲み上げた地下水(約4,000トン/日)が供給されていました。池底からの湧水が無い時は、給水しないと水が濁り、さらには水が抜けて渇水してしまうからです。この時の水も透明度は今ひとつでした。

 

10月13日(台風翌日)

10月13日、台風翌日の状態です。大量の降雨によって池の水位が上がり、神田川へ流れ出す水量も増えました。水が濁っているのは、雨水と一緒に池に流れ込んだ泥のせいです。この時点で、地下水汲み上げポンプは止められていたそうです。8基あるポンプを動かすには電気代だけでもかなりの額なので、願ったりです。

 

10月18日

5日もすると、池の水がとても澄んで来て、堰を流れる水も透明になりました。大量の水を排出するため、堰板が1段にされていました。ポンプが止まっているのにこれだけの水が流れ出しているのは、池底から大量の湧水が出ているからです。

 

 

10月26日

10月26日です。一時は少し減った水量が再び増えていました。台風の後にも大雨があったからですが、水が澄んでいるので、単に雨が池に降ったからではなく、地下水となって池底から湧き出しているからだと分かります。この時期の流出量が今回の最大レベルで、3万トン/日もあったそうです。

 

11月15日

その後は湧水が徐々に減少し、11月15日の流量はこの程度になりました。まだポンプは止まったままです。堰板が全部外されているので、池の水位がだいぶ低くなっています。元々浅いひょうたん池では、我々のザリガニワナに影響が出始めました。さらに下がって他の場所にも悪影響が出始めれば、堰板を増やしてポンプを再稼動すると思いますが、公園管理者としてはなるべく遅らせたいようです。その理由は、造成した浅場を露出させてそこの生き物に刺激(外乱)を与えたいのと、地下水を汲み上げないほうが湧水が出やすいと考えているからだそうです。

井の頭池の湧水は、昔から、季節(降水量)により大きく変動します。堰板を設けなければ池の水位も変動します。どの生き物にはどんな変動が望ましいのか、目指すべき池の姿を決めるのは簡単ではありませんが、今回の一連の水位変化が池や池の生き物にどんな影響を与えるのか、注目したいと思います。

念のために書いておくと、井の頭池の湧水を増やすのに豪雨が必要なわけではありません。大事なのは地下水位を高くすることで、そのためには、雨水の地中への浸透を促すことと、地下水を使いすぎないことが必要です。短時間で流れ去ってしまう豪雨よりも、持続的な対策が効果的です。井の頭池に湧水が湧く頻度がひと昔前より増えたのは、近隣の自治体や住民のそのような取り組みが実を結びつつあるからです。