池の水の収支

今日の弁天池は、数日前と比べて、水がかなり緑色になっていました。

アオコが浮き出した弁天池(8月9日午前)

アオコを作るプランクトン、藍藻の仲間が増えているのでしょう。写真下部の水面にはすでにアオコが浮かび始めているようです。(なお、画面中央下部から右側にかけての茶色いモヤモヤはレンズの汚れです。)

水門橋の堰(8月8日)

先日コカナダモ効果で水質が保たれていると書いたばかりなのにこんなことになったのは、猛暑で水温が上昇したため藍藻の増殖速度が増したのと、池の水が十分入れ替わっていないからです。池の末端、水門橋の堰からは、写真のように僅かの水しか流れ出ていませんでした。

藍藻類がどんどん増殖する条件であっても、それを綺麗な水で池から押し流してしまえば、水は濁りません。井の頭池に供給される水としては、ポンプで汲み上げて供給している地下水、池面に降る雨と岸から流れ込む雨水、そして自然湧水があります。一方、池から出ていく水は、水面からの蒸散、池底からの漏水(地中への浸透)、そして堰から流出する余剰分です。

堰の水量 = ポンプによる地下水量 + 雨水の量 + 自然湧水量 − 蒸散量 − 漏水量

現時点の堰の水量が少ない理由は、ポンプによる地下水供給量がなぜか減らされているからです。

昔は1日1万トンとも3万トンとも言われた豊富な湧水が井の頭池に湧き出ていたので、池は澄み切っていました。しかし高度成長期に湧水が途絶えてからは、地下水を電動ポンプで汲み上げて供給しないと池の水位を保てなくなりました。自然のしくみを壊してしまうと、それを人間が代わりに行う必要が生じ、大きなコストがかかります。現在なぜ供給水量をギリギリに絞っているのか知りませんが、節電が要請されているためかもしれません。

池の水位が保たれても、池の水が濁りすぎる場合は、薄めるために給水量を増やす必要が生じるので、消費電力が上がります。今年は大量のコカナダモが水中の養分を吸収して藍藻類の発生を抑えてくれていたのですが、そろそろ限界なのかもしれません。

Toshi

コカナダモ回収テスト(2/2)

今日は七井橋と弁天橋でやってみました。

カイツブリのヒナとコカナダモの切れ藻

写真は七井橋のボート池側にいたカイツブリのヒナで、浮いている水草はコカナダモの切れ藻です。親鳥は頻繁に潜水を繰り返して獲物を捕まえ、ヒナに運んでいました。水中に茂っているコカナダモにも、水面の切れ藻にも、小魚やエビなどが多数暮らしています。

引き寄せられる切れ藻(浮き藻)

水面に浮かんでいるコカナダモが切れ藻なのかどうかを確かめたくて、ロープ付きのフックを沈めて引っ張ってみました。すると、写真で手前の大きな塊が丸ごと引き寄せられてくるのでした。現在水面に出ているものの多くは切れ藻なのかもしれません。

切れ藻を引き寄せて回収@弁天橋

それらはもうほとんど成長せず、腐っていく可能性が高いので、水質を良くする働きは弱そうです。早めに池から回収するのが良さそうです。

写真は弁天橋際の切れ藻を回収しているところです。その下の水中には、池底から生えている水草(おそらくコカナダモ)が見えました。

橋際の切れ藻を回収(左側)した弁天橋

テスト終了後の弁天橋です。写真左側(上流側)のほうが浮き藻が少ないのが分かると思います。もっとも、しばらく前にかいぼり隊などがコカナダモの駆除活動をそちら側で大規模に実施しているので、今日は初めから少なめだったのですが。

かいぼり隊などがコカナダモを駆除したのは、その付近に生えている希少な水草を守るためでした。そういう強い動機があったとしても、繁殖力が物凄いコカナダモを駆除し続けるのは大変で、挫けそうになるのは理解できます。かいぼり(池干し)で一気に退治したいと思う人が出てきても不思議でないかもしれません。でも、コカナダモに池の過剰な養分を吸収させ、それを回収することで池の水質を維持すると考えれば、コカナダモの回収作業にも新たな意味が出てくるし、ボランティアだけに頼らずに予算を付けて業者に委託する考え方も出てくると思います。

Toshi

コカナダモ回収テスト(1/2)

ボート池の池尻(ひょうたん橋の手前)にコカナダモの切れ藻が流れ着いていたので、ひょうたん池に流下する前に回収することにしました。

橋の手前に滞留したコカナダモ
フックで集めて引き上げる

用いたのは、ロープの先にフックをつけただけの簡単な道具です。コカナダモは切れ藻でもけっこう長く、お互いに絡まり合っているので、少し離れていてもフックで引き寄せることができました。少し離れていても、投げて届く範囲なら集められます。なお、ロープの途中に付けたペットボトルは、フックが沈む深さを調節するための「浮き」です。

回収したコカナダモの一部(片岸分)

それなりに採れるし、コンパクトなので持ち運びが楽ですが、効率的には、大量の駆除にはまったく向きません。あくまでもサンプリング用です。岸に近いものは棒状の回収道具の方が効率が良いと思います。。

とはいえ、しばらく頑張ったら、写真の倍ほどの量のコカナダモを回収できました。

作業後の写真です。水に注目してください。

コカナダモ除去後

水は緑色がかっていますが、水温が高い時期にしては透明度があります。コカナダモが成長するために水中の養分を吸収したので、植物プランクトンの発生が抑えられているのだと思います。

成長を終えて切れ藻となったものは、腐ると養分が再び池に戻ってしまうし、神田川に流れ下っても迷惑なので、その前に回収するのが良いと思います。

Toshi

やっぱりきれいだった井の頭池

8月4日の未明に降った大雨は日本各地に甚大な被害を及ぼしました。ここ井の頭池にも影響がありましたが、幸いなことにそれは災害では無く、池を美しくよみがえらせるという影響でした。

大雨後のお茶の水池(8月5日)
大雨後の弁天池(8月5日)

殆どの水面では、浮いていた藻類が消えていました。雨にたたきつけられて沈んだか、流れていったのでしょう。水生物園北側の一部や池尻など隅の方を除いて、透き通る美しい水面が現れました。やはり、池の水はきれいだったのですね。

水温が高いとプランクトンが増えやすくなりますが、池に供給される水の量が増えれば薄まります。一度の大雨ではあまり薄まりませんが、雨の日が続くと地下水の水位が上がり湧水が復活することがあります。逆に、地下水を汲み上げるポンプが故障して供給水量が減ってしまうこともあります。諸々のことが影響して池の水は様変わりをします。特定のプランクトンが優占種になり、そのプランクトンの色が池の色を決定することもあります。この夏、池がまたどのように変わっていくのか見守りたいと思います。

M.O.

今の井の頭池は汚いって本当?(3/3)

カギはコカナダモ

ツツイトモが繁るボート池(2019年6月5日)

かいぼり後の水草と池の状態の歴史を考えてみると前回の問の答えが見つかるかもしれません。

かいぼり後、在来希少種のツツイトモが池で繁茂し、一時とても美しい景色を演出してくれ、さるブログで「モネの池」と評されたのが話題になりました。けれど、この写真の水はかなり緑色をしています。ミクロキスティスが発生しているのです。

ミクロキスティス(2019年10月4日)

それでも、ツツイトモが生える前よりは水の透明度は高めでした。ツツイトモも成長するために池の栄養分を吸収するからでしょう。

でも残念ながら、この年もその後にアオコが大発生しました。水を顕微鏡でみたらミクロキスティスだらけでした。

さらに池は変化を続けます。この2,3年、コカナダモが急激に増えて、今年は池の殆どを占拠してしまいました。かいぼり後に生えた希少な在来水草が駆逐されそうで、大変困ったことです。ところがです、そのコカナダモが増えるのと反比例するかのようにアオコが減ったのです。コカナダモが、大量の池の栄養塩を吸い取って繁茂したので、池の水質が良好になったのです。浮遊藻類が沢山あるのは、コカナダモがこれだけ繁茂していても、それでもまだまだ多くの藻類が増える余地があったのでしょう。

 コカナダモが繁茂するともう一つ別の現象がみられます。それは、コカナダモの林が小魚や小エビたちの絶好の棲家になるということです。

プランクトンネットに入った生き物

先日、プランクトンネットをコカナダモの林の中に落として、そっとすくい上げたところ、中にはエビやイトトンボヤゴや稚魚やミジンコ類が入っていました。大きな敵から隠れるだけでなく、ミジンコはコカナダモに付着している原生生物や藻類を食べ、エビなどはそのミジンコを食べているのでしょう。

コカナダモはこのように藻類の発生を抑制して池がアオコで覆われるのを防いでくれています。そして、コカナダモの茂みは多くの生き物たちの揺りかごになり、更には、冬場には多くの水鳥たちがコカナダモを食べに飛来して来園者を楽しませてくれています。生き物たちは皆繋がっているのです。池の生態系のなかでコカナダモは今では重要な役割を果たしているのです。

 さて、ここで大事なことをもう一つ考えなければなりません。それは、コカナダモがとても侵略的な外来植物だということです。前述したように希少な水草を駆逐してしまうので駆除の対象です。井の頭公園の自然復活の象徴でもあるイノカシラフラスコモを、コカナダモから守らなくてはなりません。

このようにコカナダモには価値ある役割があるのと同時に害悪も大きいのです。このコカナダモの相反する問題に私たちはどう対処したらよいのでしょうか。かいぼりをすればコカナダモを除去できるのだから、かいぼりをすればよい、という意見があります。けれど、かいぼりをしてコカナダモを除去しても、湧水が全く無くなっているわけではない井の頭池ではしぶとくコカナダモは残るでしょう。前回の記事で紹介したように、かいぼりで大型の水草が無くなるとアオコの大発生が待っているでしょう。そしてかいぼりは多くの生き物たちの拠り所を、そして多くの命をも奪うことになります。かいぼりには良い点と悪い点があるのです。

コカナダモ問題の解決はとても難しいです。時間をかけて皆で知恵を出し合うしかないでしょう。

M.O.

今の井の頭池は汚いって本当?(2/3)

かいぼりをすれば池はきれいになるの?

前の記事で書いたように、現在の井の頭池は、水面には汚いものが浮いていますが、水そのものはきれいなのです。そして浮いているものの正体が複数の藻類の混合体であることも分かりました。

それではどうしてあのように藻類がたくさん発生してしまうのでしょうか? その答えを見つける為に、池の水の供給源のことをまず考えてみましょう。現在、余程の長期の大雨でも降らない限り湧水で池が満たされることはありません。 普段、池に供給されている水は地下水の汲み上げによるものが殆どです。池の周りと御殿山にある7、8か所の井戸でポンプアップしています。その地下水には実は窒素分が多く含まれています。また、降雨時に池周囲から土砂が流入してリンが供給されます。それらを栄養にして藻類や水草が育つのです。なので、藻類やコカナダモのような外来水草の大繁茂を抑えることは、そう簡単ではありません。

それじゃあ、かいぼりをすればいいのでは?と考える方もいらっしゃるでしょう。残念ながらその答えは“NO”と言わざるを得ません。いくらかいぼりをしても、池の富栄養化は変わりません。それどころか今より酷い状態になる可能性が高いです。

アオコに覆われた弁天池(2018年8月1日)

そこで、比較の為に、最後(3回目)のかいぼりが終わった2018年の夏の弁天池の写真を載せます。8月1日撮影です。

抹茶色のアオコがべったりと広がっています。この年は池全体がこのような状態でした。このアオコは主にミクロキスティスという藍藻が群体を作って水面に浮いているものです。カビ臭がするばかりか、毒性を持っています。お世辞にも綺麗とはいえませんね。

アオコが発生していない弁天池(2022年7月2日)

それに対して、今年の弁天池、7月2日撮影です。水面に浮いている藻類はありますが、アオコは全く観られません。そう、今の池(の水)は汚くないのです。

こうしてみると、かいぼり後と現在の池の綺麗さはどちらが上かよくお分かりだと思います。そして、かいぼりをすれば池の見栄えが良くなる、というものではないこともお分かりいただけたでしょう。

それでは、かいぼり直後の2018年と今年は何が違って、このような差を生み出したのでしょうか。それはまた長くなりそうなので、次回の記事で考えてみましょう。

(M.O.)

今の井の頭池は汚いって本当?(1/3)

お茶の水池の水面(7月29日)

池の水面は何でこんなに汚いの?

井の頭池が汚いという声を最近よく聞きます。確かに、水面を見るといろいろたくさん浮かんでいて、綺麗とは言い難いですね。

でも大事なのは、池の水面が汚いのは、池の水が汚いからではないということです。今の水質は良好な状態です。水中のリンや窒素の値は低く、透明度も高いのです。

コカナダモの間を泳ぐウキゴリ稚魚

橋の上から、コカナダモや藻類の無い場所をジーっと覗いてみて下さい。コカナダモの茂みの間をフナやハゼ類の小魚が泳いでいるのが見えます。水が綺麗だから見えるのです。池の端の浅い所では池底まで見えるところもあります。戦後間もなくの時代は別として、井の頭池の水がこれほど綺麗だった夏はありません。

よく見ると、繁茂しているコカナダモの上に黄緑色または薄茶色の絨毯や塊のようなものがたくさん浮いているので汚く見えていることが分かります。

網で掬った「それ」。その下はコカナダモ

それは一体何なのか、掬ってみましょう。 もし「それ」がコカナダモの腐った物なら、水草ですから植物体だとすぐに分かります。また、藍藻類によるアオコであるなら、ジュースのように水に混ざっていますから、指の間からすり抜けます。ところが「それ」は、掬うと指に絡みつき、ベターっと平たい膜のようになっていました。まるで不織布のようです。それも、かなりの強度があるのです。

では、今度は「それ」を顕微鏡で観ることにしましょう。

枯れたシオグサなどの藻類

うわ、汚い! 糸状藻類だということは分かるのですが、この写真に写っているものは全部腐って葉緑体が無くなっているので何の藻類か見分けられないです。でも、よく見ると、一番左の藻類は枝分かれしているので「シオグサ」という緑藻の仲間でしょう。シオグサは多くなると、この枝分かれで複雑に絡み合い、強度のある膜のようになるのです。

アオミドロ(中央)

この部分には葉緑体のある緑色の生きている藻類がありますね。アオミドロという接合藻の仲間です。今、お茶の水橋の下で増えていて、塊が見られます。

単細胞の藍藻ミクロキスティスの群体

場所によってはこんなものも混ざっていました。これは、ミクロキスティスという藍藻の仲間で、たくさん発生するとアオコを形成します。一昨年までは、井の頭池はこのアオコで苦しめられました。

つまり、「それ」はこのようにいろいろな藻類が、しかも枯れたものやまだ生きている緑色のものが、混合体をなしたものでした。そして、シオグサが多いために絡んで膜状になって浮いているのだということが分かりました。

「それ」の正体が分かったので、池をきれいに見えるようにするにはどうしたら良いのか、次回考えてみましょう。(M.O.)

じつは、かいぼり後も汚かった

枯れて浮んだツツイトモ(2019年8月30日)

コカナダモが繁茂する前の池はもっと綺麗だったと思っている人が多いのですが、それは記憶違いか誤解です。確かに、ツツイトモが水中に茂っている光景は綺麗でした。しかしそれはせいぜい花が咲くまでのこと。その後は切れ藻となり、枯れたものが大量に水面に浮んでいました。この写真のような光景を多くの人は見ていないか覚えていないのです。この写真の水の透明度が悪いことも覚えておいてください。
なお、コカナダモも秋になると大量の切れ藻が発生し、それが流されて下流に大量に貯まることがあります。枯れているものはあまり見かけません。(Toshi)

池観察シリーズ

井の頭池の問題を解決するために2006年に始めた当会の保全活動ですが、活動のメインを陸域に移した現在、池のことをよく知らないメンバーも増えたので、3回に亘って池と池の生き物の観察をすることにしました。7月16日の全体活動時と、19日と20日のひょうたん池生き物調査の後です。

藻に覆われたお茶の水池
コカナダモの上の糸状藻類

井の頭池に激増した外来水草コカナダモについての報道が最近増え、その多くが、池を再度かいぼり(池干し)して駆除すべきだという論調です。池をよく見ていない人は記事を鵜呑みにしがちなので、問題です。

まず、問題視されている水草を観察しました。

よく見ると、水面にあるのはコカナダモではなく、糸状の藻類だと分かります。光を存分に受けられるように、コカナダモの上に広がっているのです。

木陰ではコカナダモがよく見える

そしてもっとよく見ると、水の透明度はかなり高く、水草の間を泳ぎ回る小魚やエビ、トンボのヤゴが見えました。水面近くには小さな魚が、少し深いところには大きめの魚が見えます。

晴れの日には、糸状藻の上で繁殖行動をしているムスジイトトンボなどのイトトンボ類が多数見られました。ギンヤンマ、ウチワヤンマ、コオニヤンマなどのトンボ類も池の上を飛び回っていました。

網で採取した糸状藻類とコカナダモ

糸状の藻を網で掬って観察しました。複雑に絡まり合っていて、まるで不織布のような手触りでした。アオミドロのようなヌルヌル感はありません。顕微鏡で調べたメンバーによると、シオグサが主で、それにサヤミドロなどが混じったものだそうです。いずれも在来種です。かなり丈夫なので、カイツブリのヒナが泳ぎ回るのに障害になりそうです。逆に、カイツブリに食べられる立場の魚やエビなどにとっては、安全な場所を提供してくれていると言えるのかもしれません。新聞の記事には、水面の藻類が水草の光合成を阻害すると書かれていました。しかし、そうは見えません。糸状藻の下のコカナダモはいたって元気そうです。なお、ボート池にもコカナダモが繁茂していますが、糸状藻はほとんど見られません。多数のボートが水面を掻き回すので、増えられないのだと思います。

プランクトンをチェック

弁天橋の上から、プランクトンネットを引いてみました。水草の周りにプランクトンが多く、水草が無い場所には明らかに少ないことが分かりました。コカナダモの中では、ヌカエビやウキゴリの稚魚などもネットに入りました。それらはプランクトンやコカナダモの付着藻類などを食べて育ちます。コカナダモは小さな水生動物の生活場所になっているのです。それは、水生動物を捕らえて食べるカイツブリが現在9ペアも池にいる理由です。

採取した水が澄んでいるのも印象的でした。井の頭池に供給されている地下水には窒素分が多いので、光量と水温が高い夏は植物プランクトンが発生しやすく、水の透明度が下がるのですが、コカナダモは成長のために水中の窒素を吸収するので、水質を改善する働きがあるのです。その働きは、全体量が多い分、ツツイトモより強力です。

新聞の記事には、水草の生態に詳しい人が「(コカナダモは)乾燥に弱いので、かいぼりを定期的に行い駆除するしかない」と話したと書かれていました。井の頭池には水草以外のいろいろな在来生物がたくさん暮らしていること、それらの多くはコカナダモよりはるかに乾燥に弱いことを知らないのでしょうか。井の頭池の生き物を愛情を持ってきちんと見ている人なら、そんな発想はしないと思います。外来の水草に占拠された状態が望ましいとは思いませんが、もっと穏やかで、もっと賢明な、外来水草への対処法があるはずです。今回の池観察シリーズでいちばん伝えたかったのはそのことです。この問題については、まったく言い足りないので、また書きたいと思います。

水草の中にいたヌカエビ
プランクトンの説明
藻類の解説
キツネノボタン
プランクトン観察

ひょうたん池の生き物調査 7月

ワナ上げと記録
アメリカザリガニ
スジエビ
テナガエビ
ギンブナとクロダハゼ
ウキゴリ
ワナ内で羽化したコシアキトンボ

ひょうたん池の7月の生き物調査を4日間実施しました。ひょうたん池は、井の頭池の最下流、神田川への出口にある小さな池です。

計6基のワナを沈めておき、毎朝上げて、入っている生き物の種類と数を記録します。

元々は、かいぼり後に激増したアメリカザリガニを駆除するのが目的でした。最初のかいぼり直後の2014年は、ひょうたん池だけで、(もっと多くのワナを用いて)5,280匹のザリガニを駆除しましたが、3回目のかいぼり後の2018年には574匹に減りました。その後も捕獲数が少ない状態が続いているため、その他の生き物の生息状況を知ることに目的を切り替え、実施回数も減らしています。ちなみに、今回の4日間にワナで獲れたザリガニは6匹だけでした。

最近はザリガニだけでなく、それ以外のエビや魚、トンボのヤゴなど、以前は多数採れた生き物も大幅に減っています。ひょうたん池に生き物が少ないということですが、井の頭池全体でそれらの生き物が減っているわけではどうもなさそうです。ひょうたん池以外の池全域で活動しているかいぼり隊は今も多数のザリガニを捕獲しているし、池に9ペアものカイツブリが暮らしているのは、餌となる小魚やエビなどがふんだんにいる証拠です。

生き物の密度が違う理由は、他の池には外来水草コカナダモが繁茂しているからではないかと思っています。生息場所としてとても好まれているようなのです。生き物たちは普段そこで暮らしていて、そこから漏れ出てくる生き物がひょうたん池のワナに入るのではないでしょうか。