今年も神田川のゴミ拾い

12月16日(土)、冬季の恒例となった神田川の清掃活動(ゴミ拾い)を実施しました。今回の参加者は6名。うち4名が川の中でのゴミ拾い担当、2名が陸上サポートです。活動範囲は夕やけ橋から丸山橋までの間で、左岸の親水広場からスタートしました。この範囲で越冬中の貴重な水鳥をできるだけ驚かせないように、バードウォッチャーの協力でその鳥がいる場所を事前に確認して作業する場所の順序を入れ替え、慎重に作業しました。

ゴミは可燃物と不燃物に分けて拾いました。陸上サポート担当は、満杯になったゴミ袋の引き上げと交換、ゴミ分別の確認、そして集積場所である親水広場への運搬を担当しました。関心を示す通行人にもゴミ拾いの目的などを説明しました。

下流部で特定外来生物のオオフサモが復活し始めているのが見つかりました。地下茎を残さない注意深い駆除が必要なので、後日駆除することにして場所を記録しました。また、最上流部の絶滅危惧種カワヂシャの聖域を作っているエリアで特定外来生物オオカワヂシャの群落が見つかり、こちらはすぐに駆除しました。(下流にはオオカワヂシャが繁茂しています。)

復活し始めていたオオフサモ
カワヂシャの聖域のオオカワヂシャを駆除

ゴミ拾い終了後、ゴミを再度丁寧に分別し、広場の片隅にまとめました。北南建に連絡すれば回収してもらえることになっています。作業時間は、10時からの2時間20分でした。
(ゴミ拾いを完了したと17日にメールしたら、月曜日の18日には回収完了の連絡が届きました。)

最終仕分け
拾ったゴミ

今年のゴミの量はこれまでで一番少なく、特に大きめの不法投棄ゴミが減少しました(無くなったわけではありません)。通行人からも「たしかに川がきれいになってきたね」という声が聞かれました。前にも書いたように、ベンチがある親水広場にポイ捨てされたり置き去りにされたゴミを拾ってくれる人が現れ、広場はいつもきれいです。

当会のゴミ拾い活動は今年で5年目になりますが、地域への啓発効果がたしかに現れてきていると感じています。さらに多くの人に理解が広がり、神田川が美しく保たれ、暮らす生き物が増え、気持ちよく眺められる川であってほしいと願っています。

樹木の説明(JPEG)の一覧

御殿山に生えているおもな樹木の説明です。


10月の植樹イベント(井の頭の森を育てよう プロジェクト)用に作成したものです。現在は樹名板は撤収されています。

御殿山には上記以外の樹木もあります。井の頭公園全体ならもっと多くの種類が見られます。探してみてください。

井の頭の森を育てよう プロジェクト

都立公園150周年記念のプロジェクト(10月いっぱい開催)に協賛して、井の頭かんさつ会 保全活動班では、おもな樹木に樹名板とQRコードを取り付けました。QRコードから上記の説明を見ることができます。また、活動紹介などを掲示板に展示するほか、植樹祭の10月28日(土)には「樹木のミニ観察会」を実施します。

「木と友だちになろう」ポスター

「葉っぱの違い〜わかるかな?」チラシ

「樹木のミニ観察会」ポスター

植樹イベントに協力

管理課主催の植樹イベントが行われ、我々保全活動班も10名が協力しました。

植樹イベントの目的は樹木が失われた御殿山に雑木林を再生する機運を盛り上げることで、対象者は子供たちとその保護者でした。管理課の職員が準備、受付、そして説明を担当しました。

我々は、雑木林のいろいろな樹木に親しんでもらうために、テーブル展示やミニ観察会で説明を行い、子供たちが苗木を植えるサポートもしました。

植樹のサポート
樹木のミニ観察会

観察会班も観察会活動についての展示を行いました。別の場所で月例の自然観察会を実施した後、有志が展示会場に加わりました。

井の頭かんさつ会のパネル展示(左が保全活動班、右が観察会班)

井の頭自然の会も雑木林の生態系についてのパネル展示を行い、参加者や来園者に自然のしくみについての興味深い情報を提供しました。

初めは参加者の出足が鈍かったものの、次第に増え、準備された苗木130本が全て使われました。
それらの苗木は我々が保全活動で実生から世話してきたものです。植えた密度から言っても全部が大きく成長するのは無理ですが、何本かが大きく成長し、豊かな雑木林の先駆けになってもらえたらと期待しています。

なお、今回のパネル展示や、樹木につけた樹名板と説明のQRコードは、もうしばらくそのまま残されることになりました。樹木に付けたQRコードをスマホで読めば詳しい説明が表示される方式は、なかなか評判が良かったです。

植樹イベントに向けて 掲示作業

今日の保全活動は、10月28日(土)の植樹イベントに関連した掲示作業を行いました。
西部公園緑地事務所のイベント案内はこちらです。
https://www.kensetsu.metro.tokyo.lg.jp/seibukouen0126.html

まずは、御殿山の会場の掲示板へのポスター貼りです。保全活動班は掲示板の半分を使って、活動紹介など、4種類の掲示をします。今日の掲示物はまだ完成版ではありません。

雑木林に生えている木が分かるようになり、もっと親近感を持ってもらいたくて、前回の活動時に会場周辺の木のいくつかに樹名板を取り付けました。今日はQRコードを樹名板か手前の柵に追加しました。スマホでQRコードを読むと、その樹木の説明が見られるようになっています。
現場に行かなくても、このブログのトップに固定してある記事「樹木の説明の一覧」から見ることができます。

イロハモミジの手前の柵にQRコードを取り付け
アカシデのQRコード(スマホで読めると思います)

掲示板に貼ったポスターのひとつで、樹名板とQRコードの説明です。

いま気づいたのですが、このポスターのイヌシデのQRコードはPDF版へのリンクになっているため、お使いのスマホによってはダウンロード作業が必要になるかもしれません。実際の木に貼ってあるQRコードはJPEG版へのリンクにしてあるので、より簡単に読めると思います。


この機会に、多くの人に木と友だちになってほしいと思っています。

28日のイベント当日は、保全活動班メンバーが実際の木を案内して回るミニ観察会を複数回実施します。ぜひご参加ください。

実生木の世話

実生木の世話

今日は、御殿山の玉川上水沿いの植栽エリアで、実生木の世話をしました。大きな樹が多くの種子(ドングリなど)を落とすので、毎年たくさんの実生が出るのですが、放っておくと笹や草に埋もれて光を受けられず、消えてしまいます。そこで、周りの笹を刈ったり草を抜いたりして、実生木がある程度光を受けられるようにします。今日も晴天かつ猛暑だったので、我々に直射日光が当たらないこの付近での作業になりました。水分補給に気をつければ樹林内での作業は可能です。

今は多数ある実生木ですが、大きな木に覆われて成長に必要な光を十分受けられないため、そのほとんどは消えていく運命にあります。我々が世話をしているのは、他の場所へ移植する目的があるからです。

モリチャバネゴキブリの幼虫

実生木の世話もやってみるとけっこう面白いのですが、昆虫など、雑木林のいろいろな生き物に出会えるのも活動の楽しみのひとつです。たとえば、荷物を置いていたシート上を多数の小さな虫がわらわらと歩き回っていました。モリチャバネゴキブリの幼虫です。この暑い時期だからこと、たくさんの幼虫が見られるのです。「ゴキブリ」と聞くと「うえっ」と引く人が多いのですが、これはビル内にいるチャバネゴキブリとは違い、建物に入ってくることはありません、昔から雑木林で落ち葉などを食べて暮らしています。落ち葉を土に返す働きをしている、生態系の大事な仲間です。見かけが似ているからといって嫌わないでください。ちなみに、チャバネゴキブリは外国から人間の活動に伴ってやってきた、つまり人間が連れてきた外来種です。  もちろんこの日見られたのはゴキブリだけではありません、念の為。

2023年度初日の活動

新年度は百年森と御殿山の保全活動から始めました。今年は季節の進行が早く、4月の1日なのに下旬のような植物の伸び具合です。

最初の写真は、公園の他の場所から百年森の窪地に移植したムラサキサギゴケの雑草取りをしているところです。ドーナッツ状に生えている中心が最初に移植した場所です。元の場所のような草刈りが入らないので、生育を妨げる草を取っていたら年々広がりました。でも中央部が消えているのは、土中の養分を使い切ったせいでしょうか。

その後は御殿山の植栽エリアに移動。実生木を見つけて旗を立て、今後埋まってしまわないように周りの草を刈る作業を行いました。

昆虫たちも動き出していました。

クビキリギス(成虫で越冬する)

もちろん花も咲いていました。

カントウタンポポ

こちらはカントウタンポポ。御殿山ではおそらくこの株だけです。周りの草が伸びないうちに花を咲かせ、草に埋もれる間は地上部を枯らして夏眠します。

ヨウシュヤマゴボウ駆除

本日の活動の続きです。前記事のミカンの木がある場所、百年森の隣のエリアに残っていたヨウシュヤマゴボウを除去しました。百年森は2018年まで廃材置き場だった場所で、公園内で出た排土が山積みされていました。それを敷き均して百年森を造成したので、光を受けるようになった埋土種子が一斉に芽生えました。ヨウシュヤマゴボウもその例外ではなく、次々に芽生えるのを我々は見つける度に除去してきました。今では百年森内にはほとんど生えてきませんが、柵の外は別です。そのエリアの外来植物も駆除するようになったのは昨年ごろからです。

ヨウシュヤマゴボウを引き抜く。途中で折れた根は掘り取った
引き抜いた大きな株。根はまだまだ小さい

柵の外は公園管理者による草刈りが行われていますが、この植物は根が何年も生き残る多年草です。根から新たな芽を出して再び成長し、年々根を太らせます。大きな根からは太い茎が育ち、たくさんの実を着けるので、それを鳥が食べて種子をあちこちに散布します。ですから、根が小さいうちに、しかも結実前に引き抜くのが最善で、引き抜けないほど大きくなってしまったら掘取るしかありません。幸い今日は、掘り取らないといけないものは多くありませんでした。放置すると再生する可能性のある根と、結実間近の果実は焼却処分に回しました。

今年この場所で駆除したヨウシュヤマゴボウは計40株ほどになると思います。葉が複雑な色に紅葉し、赤い軸に黒い実の房がいくつも垂れ下がる姿は、私も美しいと思います。好きな人が多いかもしれませんが、有毒植物なので、子供が口にしないよう注意が必要です。強い繁殖力を見ると、やはり駆除すべき外来種だと思います。我々は以前から公園内のヨウシュヤマゴボウの除去を行っていますが、最近数が増えている気がしています。もしかすると、気候がこの植物に合ってきているのかもしれません。

その後は百年森内を一巡して現状を確認し、早めに活動を終了しました。そのレポートは省略します。丁寧な活動をするには暑すぎるし、新型コロナへの警戒も必要ですが、自然から目を離さないでいようと思います。

一本の樹

ミカンの木

土曜日は全体活動の日なのですが、猛暑と新型コロナの感染爆発が続いているため、全体活動は取り止め、それらの危険に適正に対処する自信がある人だけで小規模に活動することにしました。集まったのは3人でした。活動内容は、百年森の世話を少々と生き物観察です。まずは、百年森の外側のミカンの木にいる生き物を観察しました。二人が見ている、樹名板が付いている木です。西園の工事の際、現場事務所を建てるために伐採が決まったのですが、仲間からのクロアゲハがよく産卵する木なので残してほしいという希望を管理者に伝えたところ、建物の位置が少し変更され、残された木です。

卵を守るメス(7月23日)
2齢になった幼虫(7月30日)

目下の観察テーマは、葉の裏で卵を守っているエサキモンキツノカメムシです。先週土曜日は卵だったのに、今日はすでに孵化して、2齢の幼虫になっていました。2齢幼虫はすぐに親元を離れて独り立ちします。子供たちがこの木で吸汁するのか、エサキモンキツノカメムシがミカンの木で卵を守っているのを見たのは初めてなので、注目しています。

この木には他にも卵を守っているメスが少なくとも2組いて、すでに子供たちが親離れ済みのものもいるのですが、この木で吸汁している幼虫をまだ見つけていません。

ナガサキアゲハ前蛹
葉に産み付けられた卵
幹に産み付けられた卵

ミカンの木が好きな昆虫の代表はアゲハの仲間でしょう。上記したように、この木を守ったのはクロアゲハでした。先週も、アゲハ類の若齢幼虫を2匹見つけました。昨日はナガサキアゲハの終齢幼虫が見つかりました。それは今日、蛹になろうとしていました。また、新たに産卵された卵が、葉や幹で複数見つかりました。エサキモンキツノカメムシが利用する樹木や草本は他にもいくつかありますが、クロアゲハやナガサキアゲハなどはミカンの仲間が無いと次の世代を残せません。井の頭公園に少ない大きなミカンの木は、たった一本でも貴重です。

神田川のオオブタクサの顛末

玉川上水のオオブタクサの件では、多くの人(市民、議員、市役所、管理に関わる役所や会社など)が迅速に動いてくれ、見つかったものは全て駆除されました。

神田川 神田橋〜みすぎ橋 のオオブタクサ(2020年9月4日撮影)

ほぼ見守っていただけの私は、玉川上水への人々の関心の高さに改めて驚いたのですが、その動きは、神田川にも波及しました。玉川上水のオオブタクサを放置するとどうなるかという参考のために添付した、神田川の神田橋〜みすぎ橋間の写真に衝撃を受けた人が多かったのだと思います。6月15日の記事に載せましたが、もう一度載せておきます。

なお、神田川は、みすぎ橋で所管の建設事務所が変わります。それより上流は多摩地区なので東京都北多摩南部建設事務所(略称:北南建)、下流は23区内なので東京都第三建設事務所(略称:三建)です。ちなみに、みすぎ橋の”みすぎ”は ”三杉”で、三鷹市と杉並区の間の橋という意味らしいです。神田川の橋と両岸の行政区の関係については、「神田川の橋 一覧」(個人の方のサイトです)などを参照してください。

さてオオブタクサの件、知人が三鷹市選出の都議に連絡してくれ、都議は北南建の担当課の課長に電話をしてくれました。その結果、7月上旬に刈ると回答があったそうです。さらに知人は、杉並区の土木事務所にも電話をしてくれたそうです。杉並土木事務所は杉並区の役所ですが、三建の実動部隊なのだそうです。杉並区の久我山付近には、神田橋〜みすぎ橋間よりも前からオオブタクサが茂っていました(種子は上流に運ばれることもあるのです)。昨年6月に杉並土木事務所が実施した「河川環境改善工事」で、岸辺の高くなった箇所に溜まった土を植物ごと浚ったので、オオブタクサは激減したのですが、その後に上流から種子が流れ着いたこともあり、今もいくらか生えています。種子が流れ着いて増える植物の駆除は上流から進めるのが基本です。

草刈りが始まっていた。(あしはら橋から上流を望む)

7月13日に神田川を見たら、夕やけ橋〜あしはら橋までの川底の草が刈られていました。草刈りは11日に始まったのではないかと思います。私は神田橋〜みすぎ橋間だけ刈るのだと思っていたのですが、みすぎ橋までの全域を刈るつもりのようです。丸山橋までのオオブタクサは私が8日に抜き取ったのですが・・・。

神田橋から みすぎ橋に向かう草刈り 7月22日

猛暑の日だけでなく、大雨による増水で川に入れなかった日もあり、草刈りはなかなか進みませんでしたが、22日に行ってみたら、神田橋を越えた所で草刈りが行われていました。この日も猛暑日で、二人が汗だくになりながら作業をしていました。警備員さんの話では、翌日23日に作業終了予定とのでした。

草刈りが終了した川(みすぎ橋から上流方向を望む)

24日に再度行ってみたら、確かに草刈りが終わっていました。ちょっと凝った造りになっている川底がよく見え、水路を泳いでいる魚も見えるようになりました。

ちなみに、ここより下流の杉並区域は、13日に見た時点ですでに、昨年のように泥ごと草が浚われていました。区議が杉並土木事務所に電話してくれたそうなので、そのせいでしょうか。

以前は毎年2回実施されていた草刈りは、最近は予算が無いとの理由で、晩秋の1回だけになっていたのですが、都議の意見を受けての方針変更でしょうか。今後は年2回実施するとの課長の説明もあったそうです。在来生物にとっては、7月の草刈りはあまり望ましくありません。ミクリ、ナガエミクリ、ヒメガマ、サジオモダカは開花したものの、種子をまだ散布できていないし、マコモやオギ、ジュズダマは、まだ開花もしていないからです。全域の草刈りはやめさせるべきだという意見もありました。ただ、それらは多年草なので、残った根から再生するし、外来植物の種子散布を阻止するには有効なので、草刈りを止めることはしませんでした。しかし理想的には、在来植物を温存しながら、丁寧に外来植物を駆除していく方法が望ましいのは間違いありません。今後もし貴重な在来水生植物が衰退していくようなら、種子散布ができるように一部を刈り残すなどの方法を提案していきたいと思います。

池観察シリーズ

井の頭池の問題を解決するために2006年に始めた当会の保全活動ですが、活動のメインを陸域に移した現在、池のことをよく知らないメンバーも増えたので、3回に亘って池と池の生き物の観察をすることにしました。7月16日の全体活動時と、19日と20日のひょうたん池生き物調査の後です。

藻に覆われたお茶の水池
コカナダモの上の糸状藻類

井の頭池に激増した外来水草コカナダモについての報道が最近増え、その多くが、池を再度かいぼり(池干し)して駆除すべきだという論調です。池をよく見ていない人は記事を鵜呑みにしがちなので、問題です。

まず、問題視されている水草を観察しました。

よく見ると、水面にあるのはコカナダモではなく、糸状の藻類だと分かります。光を存分に受けられるように、コカナダモの上に広がっているのです。

木陰ではコカナダモがよく見える

そしてもっとよく見ると、水の透明度はかなり高く、水草の間を泳ぎ回る小魚やエビ、トンボのヤゴが見えました。水面近くには小さな魚が、少し深いところには大きめの魚が見えます。

晴れの日には、糸状藻の上で繁殖行動をしているムスジイトトンボなどのイトトンボ類が多数見られました。ギンヤンマ、ウチワヤンマ、コオニヤンマなどのトンボ類も池の上を飛び回っていました。

網で採取した糸状藻類とコカナダモ

糸状の藻を網で掬って観察しました。複雑に絡まり合っていて、まるで不織布のような手触りでした。アオミドロのようなヌルヌル感はありません。顕微鏡で調べたメンバーによると、シオグサが主で、それにサヤミドロなどが混じったものだそうです。いずれも在来種です。かなり丈夫なので、カイツブリのヒナが泳ぎ回るのに障害になりそうです。逆に、カイツブリに食べられる立場の魚やエビなどにとっては、安全な場所を提供してくれていると言えるのかもしれません。新聞の記事には、水面の藻類が水草の光合成を阻害すると書かれていました。しかし、そうは見えません。糸状藻の下のコカナダモはいたって元気そうです。なお、ボート池にもコカナダモが繁茂していますが、糸状藻はほとんど見られません。多数のボートが水面を掻き回すので、増えられないのだと思います。

プランクトンをチェック

弁天橋の上から、プランクトンネットを引いてみました。水草の周りにプランクトンが多く、水草が無い場所には明らかに少ないことが分かりました。コカナダモの中では、ヌカエビやウキゴリの稚魚などもネットに入りました。それらはプランクトンやコカナダモの付着藻類などを食べて育ちます。コカナダモは小さな水生動物の生活場所になっているのです。それは、水生動物を捕らえて食べるカイツブリが現在9ペアも池にいる理由です。

採取した水が澄んでいるのも印象的でした。井の頭池に供給されている地下水には窒素分が多いので、光量と水温が高い夏は植物プランクトンが発生しやすく、水の透明度が下がるのですが、コカナダモは成長のために水中の窒素を吸収するので、水質を改善する働きがあるのです。その働きは、全体量が多い分、ツツイトモより強力です。

新聞の記事には、水草の生態に詳しい人が「(コカナダモは)乾燥に弱いので、かいぼりを定期的に行い駆除するしかない」と話したと書かれていました。井の頭池には水草以外のいろいろな在来生物がたくさん暮らしていること、それらの多くはコカナダモよりはるかに乾燥に弱いことを知らないのでしょうか。井の頭池の生き物を愛情を持ってきちんと見ている人なら、そんな発想はしないと思います。外来の水草に占拠された状態が望ましいとは思いませんが、もっと穏やかで、もっと賢明な、外来水草への対処法があるはずです。今回の池観察シリーズでいちばん伝えたかったのはそのことです。この問題については、まったく言い足りないので、また書きたいと思います。

水草の中にいたヌカエビ
プランクトンの説明
藻類の解説
キツネノボタン
プランクトン観察