神田川のオオブタクサなどの状況

先日、玉川上水のオオブタクサについて書きました。今年の神田川の状況を知りたいと思い、今日は富士見ヶ丘の先まで見てきました。

丸山橋より上流のオオブタクサ

我々の活動範囲である丸山橋の上流では、5本の小さなオオブタクサを見つけました。今年はすでに5度ほど駆除(抜き取り)をしているので、それより後に埋土種子から芽生えたものです。芽生えの時期がばらつくのも、完全駆除が難しい理由です。天候のようすを見て、開花前に駆除する予定です。

三鷹台鉄橋〜神田橋間のメリケンガヤツリ

丸山橋〜三鷹台鉄橋間は、岸辺を歩けないためチェックできません。陸地が無いのでオオブタクサは無さそうです。

三鷹台鉄橋〜神田橋間には、オオブタクサは見られませんでした。しかし、重点対策外来種メリケンガヤツリが目立ちました。

神田橋〜みすぎ橋間はこんな状況でした。オオブタクサが多数生えています。まだ小さくて、凝った造りの水路も、そこで泳ぐ魚も見えますが、開花する頃のオオブタクサは草丈が4mほどになり、ほかは何も見えなくなります。

メリケンガヤツリと

久我山付近の一例です。昨年6月の「河川環境改善工事」で草と泥がきれいに除去されたのですが、メリケンガヤツリがびっしりと生え、結実していました。そしてその中にオオブタクサがポツポツと生えていて、復活中でした。我々の活動エリアでは見つけしだい除去しているのでほとんど無いのですが、除去しないとこんなに侵略的なのだと初めて知りました。写真より広い範囲を眺めると凄さが実感できるので、自分の目で見られることをお勧めします。

保護柵内の笹刈り

御殿山の雑木林内にも、守りたい植物のための保護柵がいくつかあります。しばらく世話をしていなかった間に草やササが伸びて、保護したい植物が埋もれそうなので、刈り取りをしました。

シオデ保護柵内の草刈り

写真はシオデを機械的な草刈りから守るために3年ほど前に保護柵を設置した場所です。雌株と雄株が無いと結実しないシオデの実が見られるのは、園内ではここだけでした。柵で囲うと、その中の草刈りは我々が丁寧にやることになります。ツルは光を求めて伸びるので、草刈りをしなくてもシオデがすぐにダメになることはないのですが、地上部は秋に枯れ、次の年には地下茎を伸ばして日当たりが良い場所に芽生えるので、柵からどんどん出ていき、刈られてしまうことになります。

ヤブの笹刈り

ここは別のツル性樹木を保護している、ムラサキシキブやマユミなどの茂みです。そういうツル植物にとって、背が高くない樹木がある茂みの存在は大切です。小鳥などの生き物にとっても貴重です。しかしあまり繁すぎると園内の見通しが悪くなるので、伸びすぎた笹などを刈りました。

今年度から「多様な生物が生息する都立公園づくり事業」が井の頭公園で始まりました。今後はいろいろな生き物が暮らせる環境を公園管理者が整備し維持するようになってほしいです。

玉川上水のオオブタクサ

年1回の水質調査に行った際、境橋付近に重点対策外来種オオブタクサが生えているのに気づきました。

玉川上水のオオブタクサ(写真中央)
柵内外にオオブタクサ(6月5日)
神田川 神田橋〜みすぎ橋 のオオブタクサ(2020年9月4日撮影)

我々は神田川に蔓延したオオブタクサの惨状をよく知っているし、丸山橋(三鷹台)より上流では駆除活動も行っているので、再度8日にどこまで広がっているのか調べに行きました。その結果、境橋〜下流の桜橋の間の左岸に広がっていることが分かりました。玉川上水の柵の内側(上水内)と、外側(玉川上水緑道)の両方に生えていました。その日は緑道の草刈りが業者により行われていましたが、なぜかオオブタクサだけ刈り残されています。作業していた人に聞いてみたら、それが玉川上水の景観や生物の生息環境を一変させてしまう侵略的な外来植物だと知らないようでした。

今駆除を始めなければ、下流一帯がオオブタクサに覆われる事態になりそうなので、何人かの人に伝えたところ、一人が武蔵野市議に連絡してくれ、市議が武蔵野市に話をし、武蔵野市が境浄水場(東京都水道局)に要望した結果、近日中に草刈りをするとの返事をもらったそうです。侵入から複数年経っていそうなので、埋土種子がすでに存在していると思いますが、抑え込めることを期待しています。

玉川上水にはいろいろな樹木が茂り野草が生え、野鳥や昆虫なども暮らしているので、自然が好きな人にとってとても貴重な環境になっています。そのため、それが損なわれることに敏感な人が多く、住民運動も盛んです。三面護岸の単なる排水路にされ、沿川住民の関心が薄い神田川と比べると、羨ましい気がします。

保全活動としての自然観察

土曜日に実施している保全活動班の全体活動ですが、今年度はほぼ百年森と水玉エリア(ミズタマソウ保護エリア)だけの活動になっていました。新型コロナが落ち着きを見せ、新たなメンバーも増えたので、より広い知識と視野で活動してもらいたくて、今回は公園内の自然の状況を皆で観察して回ることにしました。

参加者は7名のみでしたが、植物、野鳥、昆虫、菌類、トータルな自然環境など、日頃から詳しく観察している人が、持っている知見や改善すべき問題点などを、他の参加者と共有しながら、園内を観察して回りました。

もちろん、観察をすれば新たな発見があります。そのたびに時間をかけたので、予定したコースの一部しか回れませんでしたが、それぞれが新たな知識を得ることができました。とても面白かった、という意見が多かったので、今後も時々実施したいと思います。自然の面白さや大切さを知るほど、保全活動に参加するモチベーションが高まります。

以下は、観察したことのほんの一部です。

クヌギの切り株に発生したカエンタケ

触っただけで皮膚がただれるという猛毒きのこカエンタケ。ナラ枯れした木によく発生する。昨年多数発生したが、今年も出てきた。ナラ枯れ菌を運ぶカシノナガキクイムシが、カエンタケの菌も一緒に運ぶという説がある。カシノナガキクイムシもカエンタケも在来種なのに、近年になってナラ枯れが広がったのは、薪炭用に植えたナラ類を利用しなくなり、カシナガが好んで穿孔する大径木になったのが理由らしい。

地面がカチカチの御殿山の広場で、改良策について説明

台風やナラ枯れで樹が無くなり、来園者に踏み固められて草も生えない御殿山の広場。今後の改良策について、意見を出した本人が説明。

周りの植栽エリアも樹木も減ってしまったので、今後どんな樹を植え、どのような環境に維持管理していくかも、大きな課題です。

子育てシーズン中の野鳥がいろいろ見られ、カメラマンが何人もいましたが、私は鳥の写真を撮れないので省略。とにかく、野鳥にとっても野鳥ファンにとっても、井の頭公園の環境は重要です。珍しい鳥の情報が伝わると人が押し寄せすぎるという問題もあります。

ハチガタハバチ幼虫

ヤマユリの葉を食べ、その葉の上で休んでいた、ハチガタハバチの幼虫。鳥のフンに擬態しているらしい。ちょっと不思議な名前は、成虫がアシナガバチの一種ムモンホソアシナガバチに擬態しているかららしい。ハバチ(葉蜂)もハチですけど!? 虫の生態も人間の命名も不思議です。植物の種類が多いほど、見られる昆虫の種類も増えます。

ラミーカミキリ。美しいカミキリムシですが外来種です。ラミーの仲間のカラムシやヤブマオがある井の頭公園でも増えています。

特定外来生物に格上げ?された蝶アカボシゴマダラもそうですが、繁殖力が強い外来昆虫がいったん増えてしまうと、駆除は困難です。

希少植物発見

井の頭公園では1箇所にしか生き残っていないと思っていた在来植物をここで発見。手入れの仕方が改善され、環境が良くなれば、姿を消していた植物が復活する可能性があります。

その植物が写真のどこにあるか分かりますか?

最近池の周りに何箇所か造られた剪定枝槽。樹木を剪定すると出る枝や葉は、今までは園外に搬出されて処分されていたのですが、今後はここに入れられ、腐葉土などとして再利用されるそうです。そこは虫などが暮らす場所にもなるでしょう。

我々は、園内の低木や植え込みの剪定の仕方についても、改善を要望してきました。園芸職員が増員され、剪定の方法も改善されています。

我々が園内外の自然をよく観察し、自分たちで可能な活動は行いながら、管理者に報告や要望をすることは、意味があることなので、今後も続けていきます。