百年森とは

百年森を視察

本日12月28日(土)は2019年最後の活動日。用具物置の大掃除を済ませてから、参加者全員で百年森へ行き、今年の活動の成果を確認するとともに、今後やるべきことについて考えました。

これまで百年森とはいったい何なのかを説明せずに記事を書いてきたので、説明をしたいと思います。

文学施設建設計画

百年森は、井の頭公園の西園の、万助橋側入口から入って右側すぐのところにある、ロープ柵で囲われたエリアです。元は「資材置き場」とか「管理ヤード」などと呼ばれ、公園管理で出る廃材などを一時的に貯留する場所でした。新たな管理ヤードが近くにできて不要になったこの場所に、三鷹市が文学施設を建設する方針が2018年に突然示されました。その方針には、この場所の価値を理解していた団体や市民から多くの反対意見が出されました。当会もそのひとつで、我々としては、井の頭公園の中でもとくに多様な生き物が生息する、草木が茂り湿潤な玉川上水沿いの緑と、西園のおもに人間が利用する明るく乾燥したエリアとの間を緩やかに繋ぐ、環境緩衝機能の重要さをとくに重視していました。同様な意見を持つ複数の団体と協力して、当時の三鷹市長に意見書を提出するなどの反対運動を続けた結果、市長の理解が得られ、文学施設建設計画は撤回されたのです。

百年森の実現

それを受けて我々は、そこをより価値ある場所、すなわち、環境緩衝機能をさらに強化し、その場所自体を生き物最優先の場所にするよう、管理者である西部公園緑地事務所の所長にお願いしました。我々にできる世話はやりますから、という約束付きでです。その願いが受け入れられ、必要最低限の整備工事が行われ、2019年の5月から、当会と井の頭 自然の会、そして亜大富士山クラブが協力して世話をすることになりました。

百年森という名称

「百年森」という名前は、活動のためにはどの場所のことかすぐに分かる短い呼称が必要と考えて、当会と自然の会で付けた名前で、管理者が正式に認めた名称ではありません。しかし、管理者への活動報告などには、その名称を用いています。なお、「百年森」は公園内など自明な範囲で用いる略称で、「井の頭百年森」が正式名称ということになっています。「百年」と付けたのは、長い年月、いく世代にも渡って、生き物たちにとってより良い場所に育てていってほしい、という願いを込めました。なお、「百年森」としましたが、必ずしも鬱蒼とした森を目指しているわけではありません。今後世話に関わってくれる人たちに決めてもらえればよいと考えています。

百年森の一年目

日光浴をするキタテハ(成虫越冬)

世話を始めてからまだ半年ちょっとですが、その短い間にも、百年森はしだいに良い自然環境になってきたと感じています。公園内の側溝など各所から持ってきて山積みされていた土を敷きならしたので、それに混じっていた外来植物などの種子がすごい勢いで次々に芽生えましたが、選択的な除草を丁寧に繰り返した結果、外来植物は大幅に減り、在来植物が優先する場所になりました。草で覆われ、実生木も生えてきたので、そのような環境を好む虫が増えました。それを目当てにやってくる上位の昆虫や爬虫類、鳥なども見られるようになっています。そのような変化を見られるのも、継続的に世話をしている楽しみのひとつです。

キショウブ除去テスト

12月20日(水)、神田川上流部でキショウブの除去テストを実施しました。侵略的外来植物キショウブの駆除はこれまで、井の頭池(おもに井の頭かいぼり隊による)→神田川源流部(井の頭かんさつ会による)→ と、上流から進んできていて、いよいよ神田川上流部での駆除に取り組む段階に来ました。三面護岸の河床での作業は作業性や安全面で不明な部分があるため、それらを調べるため、少しだけ駆除作業をしてみることにしたのです。

キショウブ除去中

写真が駆除作業のようすです。この周りにはもっとたくさんのキショウブが生えているし、ここまで歩いてくる途中にも、気づいていなかったキショウブを二箇所で発見したのですが、今回は写真の小さな群落に集中しました。ここにはあまり泥が無いのですが、キショウブは根茎(地下茎)とヒゲ根を石の間に張り巡らせて、川底に張り付いていました。それを剥がすように丁寧に取り除きます。ほんのひと抱えほどの群落なのに、除草したものは45リットルゴミ袋1杯半になりました。

川底を実際に見て歩いた結果、キショウブが思っていたよりも多くの場所に定着していて、さらに分布を広げつつあることが分かりました。もし放置すれば、神田川上流部にかろうじて残っている希少な在来水生植物が生息場所を失ってしまいます。今回のテストで駆除作業の要点や課題が分かったので、今後の活動でキショウブの駆除を少しずつ進めていきたいと考えています。

川に、空き缶や空き瓶、ビニールなどのゴミがたくさん落ちているのに呆れました。レジ袋などは風に吹かれて入ったのかもしれませんが、空き缶や空き瓶は明らかに誰かが投げ入れたものです。川を良くするには、多くの人に、ここにはいろいろな生き物が暮らしていることを知ってもらい、この川を好きになってもらう必要があると思いました。

百年森の冬の活動

外来種除草作業

12月14日(土)は、毎月恒例の百年森の三団体合同活動でした。枯れた草の刈り取りなどの冬支度は11月30日の活動で済んでいるので、この日は残っている外来植物の除草を実施しました。例えばトキワツユクサは常緑性なので、冬の間も光合成をして茎や葉を伸ばします。ロゼットの形で、つまり地面に張り付くように葉を広げて光合成を続け、春以降の生長のために栄養を蓄える外来植物もあります。冬は多くの草木が枯れているし、邪魔する蚊などの害虫もいないので、外来植物を減らす作業には良い時期です。

百年森で除草したトキワツユクサなど

写真が百年森で除草した外来植物で、そのほとんどがトキワツユクサです。結実しない種類も種子を作る種類も生えていました。一度や二度の除草ではどうしても残ってしまい、油断すると勢いを取り戻すので、冬の間も時々チェックが必要です。

この日はその後に他の場所へも行き、別の外来野草のロゼットの掘り取りも実施しました。冬にやるべきことや、冬にやったほうが効果的なことはいろいろあります。

池の活動終了

オダアミを洗う

寒くなりザリガニがほとんど入らなくなったので、今日の活動で、ひょうたん池のドームカゴ(ザリガニ捕獲用ワナ)と、生き物モニタリング用に池の複数箇所に設置してあったオダアミをすべて撤収しました。

オダアミは水道や池の水で洗い、きれいに汚れを落としました。

ドームカゴを洗う

ドームカゴは解体し、神田川の源流部できれいに洗いました。オダアミもドームカゴも、長期間水中に浸かっていたので、藻や泥がびっしりと付着しています。ブラシで擦ってきれいに洗い流してから、漁具物置に運びました。

これで今年の、ワナを使用する池の活動は終了です。今年のザリガニ捕獲(駆除)活動は次の結果でした。

【2019年度ザリガニ駆除活動結果】
活動回数(実施日数):計162日 うち全体活動39日、朝のワナ上げ123日
駆除数:計744匹 うち全体活動211匹、朝のワナ上げ533匹
これは、2018年度より約3割増ですが、2017年度と比べると5分の1以下です。

ザリガニの稚エビ

今日のワナ上げでは、ドームカゴでザリガニ成体が1匹獲れたほか、オダアミに沈んでいた落ち葉の中から4匹のザリガニの稚エビが見つかりました。ザリガニは来年に向けて、着々と復活の準備をしているのです。来年も防除活動の手を緩めるわけにはいかないようです。ワナの再設置は4月の予定です。