今の井の頭池は汚いって本当?(1/3)

お茶の水池の水面(7月29日)

池の水面は何でこんなに汚いの?

井の頭池が汚いという声を最近よく聞きます。確かに、水面を見るといろいろたくさん浮かんでいて、綺麗とは言い難いですね。

でも大事なのは、池の水面が汚いのは、池の水が汚いからではないということです。今の水質は良好な状態です。水中のリンや窒素の値は低く、透明度も高いのです。

コカナダモの間を泳ぐウキゴリ稚魚

橋の上から、コカナダモや藻類の無い場所をジーっと覗いてみて下さい。コカナダモの茂みの間をフナやハゼ類の小魚が泳いでいるのが見えます。水が綺麗だから見えるのです。池の端の浅い所では池底まで見えるところもあります。戦後間もなくの時代は別として、井の頭池の水がこれほど綺麗だった夏はありません。

よく見ると、繁茂しているコカナダモの上に黄緑色または薄茶色の絨毯や塊のようなものがたくさん浮いているので汚く見えていることが分かります。

網で掬った「それ」。その下はコカナダモ

それは一体何なのか、掬ってみましょう。 もし「それ」がコカナダモの腐った物なら、水草ですから植物体だとすぐに分かります。また、藍藻類によるアオコであるなら、ジュースのように水に混ざっていますから、指の間からすり抜けます。ところが「それ」は、掬うと指に絡みつき、ベターっと平たい膜のようになっていました。まるで不織布のようです。それも、かなりの強度があるのです。

では、今度は「それ」を顕微鏡で観ることにしましょう。

枯れたシオグサなどの藻類

うわ、汚い! 糸状藻類だということは分かるのですが、この写真に写っているものは全部腐って葉緑体が無くなっているので何の藻類か見分けられないです。でも、よく見ると、一番左の藻類は枝分かれしているので「シオグサ」という緑藻の仲間でしょう。シオグサは多くなると、この枝分かれで複雑に絡み合い、強度のある膜のようになるのです。

アオミドロ(中央)

この部分には葉緑体のある緑色の生きている藻類がありますね。アオミドロという接合藻の仲間です。今、お茶の水橋の下で増えていて、塊が見られます。

単細胞の藍藻ミクロキスティスの群体

場所によってはこんなものも混ざっていました。これは、ミクロキスティスという藍藻の仲間で、たくさん発生するとアオコを形成します。一昨年までは、井の頭池はこのアオコで苦しめられました。

つまり、「それ」はこのようにいろいろな藻類が、しかも枯れたものやまだ生きている緑色のものが、混合体をなしたものでした。そして、シオグサが多いために絡んで膜状になって浮いているのだということが分かりました。

「それ」の正体が分かったので、池をきれいに見えるようにするにはどうしたら良いのか、次回考えてみましょう。(M.O.)

じつは、かいぼり後も汚かった

枯れて浮んだツツイトモ(2019年8月30日)

コカナダモが繁茂する前の池はもっと綺麗だったと思っている人が多いのですが、それは記憶違いか誤解です。確かに、ツツイトモが水中に茂っている光景は綺麗でした。しかしそれはせいぜい花が咲くまでのこと。その後は切れ藻となり、枯れたものが大量に水面に浮んでいました。この写真のような光景を多くの人は見ていないか覚えていないのです。この写真の水の透明度が悪いことも覚えておいてください。
なお、コカナダモも秋になると大量の切れ藻が発生し、それが流されて下流に大量に貯まることがあります。枯れているものはあまり見かけません。(Toshi)

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