かいぼりをすれば池はきれいになるの?
前の記事で書いたように、現在の井の頭池は、水面には汚いものが浮いていますが、水そのものはきれいなのです。そして浮いているものの正体が複数の藻類の混合体であることも分かりました。
それではどうしてあのように藻類がたくさん発生してしまうのでしょうか? その答えを見つける為に、池の水の供給源のことをまず考えてみましょう。現在、余程の長期の大雨でも降らない限り湧水で池が満たされることはありません。 普段、池に供給されている水は地下水の汲み上げによるものが殆どです。池の周りと御殿山にある7、8か所の井戸でポンプアップしています。その地下水には実は窒素分が多く含まれています。また、降雨時に池周囲から土砂が流入してリンが供給されます。それらを栄養にして藻類や水草が育つのです。なので、藻類やコカナダモのような外来水草の大繁茂を抑えることは、そう簡単ではありません。
それじゃあ、かいぼりをすればいいのでは?と考える方もいらっしゃるでしょう。残念ながらその答えは“NO”と言わざるを得ません。いくらかいぼりをしても、池の富栄養化は変わりません。それどころか今より酷い状態になる可能性が高いです。
そこで、比較の為に、最後(3回目)のかいぼりが終わった2018年の夏の弁天池の写真を載せます。8月1日撮影です。
抹茶色のアオコがべったりと広がっています。この年は池全体がこのような状態でした。このアオコは主にミクロキスティスという藍藻が群体を作って水面に浮いているものです。カビ臭がするばかりか、毒性を持っています。お世辞にも綺麗とはいえませんね。
それに対して、今年の弁天池、7月2日撮影です。水面に浮いている藻類はありますが、アオコは全く観られません。そう、今の池(の水)は汚くないのです。
こうしてみると、かいぼり後と現在の池の綺麗さはどちらが上かよくお分かりだと思います。そして、かいぼりをすれば池の見栄えが良くなる、というものではないこともお分かりいただけたでしょう。
それでは、かいぼり直後の2018年と今年は何が違って、このような差を生み出したのでしょうか。それはまた長くなりそうなので、次回の記事で考えてみましょう。
(M.O.)