保護柵内の笹刈り

御殿山の雑木林内にも、守りたい植物のための保護柵がいくつかあります。しばらく世話をしていなかった間に草やササが伸びて、保護したい植物が埋もれそうなので、刈り取りをしました。

シオデ保護柵内の草刈り

写真はシオデを機械的な草刈りから守るために3年ほど前に保護柵を設置した場所です。雌株と雄株が無いと結実しないシオデの実が見られるのは、園内ではここだけでした。柵で囲うと、その中の草刈りは我々が丁寧にやることになります。ツルは光を求めて伸びるので、草刈りをしなくてもシオデがすぐにダメになることはないのですが、地上部は秋に枯れ、次の年には地下茎を伸ばして日当たりが良い場所に芽生えるので、柵からどんどん出ていき、刈られてしまうことになります。

ヤブの笹刈り

ここは別のツル性樹木を保護している、ムラサキシキブやマユミなどの茂みです。そういうツル植物にとって、背が高くない樹木がある茂みの存在は大切です。小鳥などの生き物にとっても貴重です。しかしあまり繁すぎると園内の見通しが悪くなるので、伸びすぎた笹などを刈りました。

今年度から「多様な生物が生息する都立公園づくり事業」が井の頭公園で始まりました。今後はいろいろな生き物が暮らせる環境を公園管理者が整備し維持するようになってほしいです。

保全活動としての自然観察

土曜日に実施している保全活動班の全体活動ですが、今年度はほぼ百年森と水玉エリア(ミズタマソウ保護エリア)だけの活動になっていました。新型コロナが落ち着きを見せ、新たなメンバーも増えたので、より広い知識と視野で活動してもらいたくて、今回は公園内の自然の状況を皆で観察して回ることにしました。

参加者は7名のみでしたが、植物、野鳥、昆虫、菌類、トータルな自然環境など、日頃から詳しく観察している人が、持っている知見や改善すべき問題点などを、他の参加者と共有しながら、園内を観察して回りました。

もちろん、観察をすれば新たな発見があります。そのたびに時間をかけたので、予定したコースの一部しか回れませんでしたが、それぞれが新たな知識を得ることができました。とても面白かった、という意見が多かったので、今後も時々実施したいと思います。自然の面白さや大切さを知るほど、保全活動に参加するモチベーションが高まります。

以下は、観察したことのほんの一部です。

クヌギの切り株に発生したカエンタケ

触っただけで皮膚がただれるという猛毒きのこカエンタケ。ナラ枯れした木によく発生する。昨年多数発生したが、今年も出てきた。ナラ枯れ菌を運ぶカシノナガキクイムシが、カエンタケの菌も一緒に運ぶという説がある。カシノナガキクイムシもカエンタケも在来種なのに、近年になってナラ枯れが広がったのは、薪炭用に植えたナラ類を利用しなくなり、カシナガが好んで穿孔する大径木になったのが理由らしい。

地面がカチカチの御殿山の広場で、改良策について説明

台風やナラ枯れで樹が無くなり、来園者に踏み固められて草も生えない御殿山の広場。今後の改良策について、意見を出した本人が説明。

周りの植栽エリアも樹木も減ってしまったので、今後どんな樹を植え、どのような環境に維持管理していくかも、大きな課題です。

子育てシーズン中の野鳥がいろいろ見られ、カメラマンが何人もいましたが、私は鳥の写真を撮れないので省略。とにかく、野鳥にとっても野鳥ファンにとっても、井の頭公園の環境は重要です。珍しい鳥の情報が伝わると人が押し寄せすぎるという問題もあります。

ハチガタハバチ幼虫

ヤマユリの葉を食べ、その葉の上で休んでいた、ハチガタハバチの幼虫。鳥のフンに擬態しているらしい。ちょっと不思議な名前は、成虫がアシナガバチの一種ムモンホソアシナガバチに擬態しているかららしい。ハバチ(葉蜂)もハチですけど!? 虫の生態も人間の命名も不思議です。植物の種類が多いほど、見られる昆虫の種類も増えます。

ラミーカミキリ。美しいカミキリムシですが外来種です。ラミーの仲間のカラムシやヤブマオがある井の頭公園でも増えています。

特定外来生物に格上げ?された蝶アカボシゴマダラもそうですが、繁殖力が強い外来昆虫がいったん増えてしまうと、駆除は困難です。

希少植物発見

井の頭公園では1箇所にしか生き残っていないと思っていた在来植物をここで発見。手入れの仕方が改善され、環境が良くなれば、姿を消していた植物が復活する可能性があります。

その植物が写真のどこにあるか分かりますか?

最近池の周りに何箇所か造られた剪定枝槽。樹木を剪定すると出る枝や葉は、今までは園外に搬出されて処分されていたのですが、今後はここに入れられ、腐葉土などとして再利用されるそうです。そこは虫などが暮らす場所にもなるでしょう。

我々は、園内の低木や植え込みの剪定の仕方についても、改善を要望してきました。園芸職員が増員され、剪定の方法も改善されています。

我々が園内外の自然をよく観察し、自分たちで可能な活動は行いながら、管理者に報告や要望をすることは、意味があることなので、今後も続けていきます。

百年森の三年

百年森パノラマ

西園の一角にある「百年森」は、生き物最優先の場所にしたいと、2019年の5月11日に3団体共同で世話を始めてから三年になります。その隣にあるミズタマエリア(ミズタマソウ保護エリア)はもう少し早くから関わっていますが、今は一体と考えて同時に世話をしています。

エザ
エゾノギシギシの根

今日は明け方まで雨だったので、作業は控えめにして、状態チェックや生き物観察を中心に活動しました。とはいえ、気になった外来植物の駆除も少しやりました。写真は巨大な葉をつけていたエゾノギジギシで、根も巨大でした。こんなに大きくなるまで掘り取っていなかったのは、単に同定をサボっていたからです。

両エリアとも、トキワツユクサやハルジオンなど、しつこい種類はまだ残っていますが、外来植物を積極的に除去してきたので、公園の他のエリアと比べるとかなり少ないです。また、園内で見つけた希少な在来植物を草刈りされる前に救出して、ここに移植する活動もしてきました。今では在来植物の種類がだいぶ増えています。ミズタマエリアは最初は「ミズタマソウ保護エリア」と読んでいました。井の頭公園ではここにしか無かったミズタマソウを保護するために囲ってもらったエリアだからです。しかし保護している植物が増えたので、長い名前は使いにくいこともあり、呼称を短縮しました。

ヒダリマキマイマイ

写真はミズタマエリアにいたヒダリマキマイマイの一部です。生息数が減っているという、地上性のカタツムリですが、玉川上水沿いの樹林と連続しているこの場所には多数生息しています。今日は雨上がりなので、よく見て歩かないと踏み潰しそうなほど出歩いていました。

若木も育ってきた

百年森という名前も、短い呼称がほしくて我々が名づけたものです。良い環境に育てるには何年もかかるので、次の世代、そのまた次の世代と活動を引き継いでいってほしいのです。まだ百分の三しか経っていませんが、しだいに環境の複雑さが増し、生き物が増えています。百年森は玉川上水とは少しだけ離れていますが、多様な生き物が暮らせる環境として、お互いに補い合う場所になってほしいと願っています。

三鷹市から感謝状

三鷹市から感謝状をいただきました。

2020年に三鷹市が市政施行70周年を迎え、一年延期されていた記念式典が今年の11月3日に行われたそうです。その一部として、功労のあった個人・団体・企業などに三鷹市から感謝状が贈られたそうです。対象者がかなり多かったようで、式典からだいぶ経ちましたが、本日市役所で、生活環境部長から感謝状を手渡していただきました。

環境対策課の推薦だそうで、当会が2005年から自然観察会と環境保全活動を続けていること、2007年に「三鷹市環境活動表彰」を受けたこと、2016年には環境対策課の推薦で環境省の「水・土壌環境保全活動功労者表彰」を受けたことなどが評価されたそうです。

三鷹市の発展につくしたかどうかは疑問ですが、16年以上、曲がりなりにも活動を続けてこれました。活動に参加していただいた皆さんと、支援や応援をしていただいた皆さんにこそ、感謝状を贈りたいです。ありがとうございます。(トシ)

今月三回目の全体活動

10月三回目の全体活動を、8名の参加者で実施しました。コロナがかなり収束したので、あまり心配なく活動できるようになったのが嬉しいです。もちろん、マスク着用など基本的対策はしっかりやっています。

ミズタマエリアの作業

今日は、前の二回で手が回らなかった、ミズタマエリア(ミズタマソウ保護エリア)の世話がメインでした。茂りすぎた在来植物や枯れ始めた植物の間引き、まだ見つかる外来植物の駆除などです。この場所は「ミズタマソウ保護エリア」という名前で、省略してミズタマソウエリアと呼ばれていましたが、今ではそれ以外の大事な植物も増えたので、今後は場所を識別する名前として、短く「ミズタマエリア」と呼びたいと思います。

保護柵内の笹刈り

御殿山の雑木林にも、当会が保護している(井の頭公園では)希少な野草がいくつかあるので、その世話(保護柵の補修と草取り)もしました。一般立ち入り禁止のエリア内なのに、保護柵のロープがナイフでズタズタに切られていたのは残念でした。時々こういうことがあるのですが、誰が何のためにやっているのか不明です。

生き物観察中

百年森も含め、植物や昆虫などの生き物観察もしました。2019年の5月に世話を始めたときは更地でしたが、今では色々な生き物が暮らす場所になってきました。生き物たちの活動が一段落する冬の初めに、草刈りを実施したいと思っています。

コロナ禍+猛暑下の全体活動

猛暑の夏は、熱中症を防ぐため、保全活動(=野外での活動)を控えめにしているのですが、新型コロナが収まらない今年は、大勢での活動がさらに難しくなっています。そのため、必要最小限の(実態はそれに及ばない)活動を少人数かつ短時間でたまに実施するにとどめています。しかし、植物はコロナにも暑さにも関係なく成長を続けているため、百年森も草がかなり茂ってきました。時間をおくほど世話が大変になるので、井の頭かんさつ会と井の頭自然の会のメンバーに声をかけて、久しぶりの全体活動を実施しました。参加者は計8名でした。

分散して作業

感染力が強いデルタ株への感染が増えているそうなので、お互いの距離を開けるなど感染対策を徹底し、さらには熱中症を防ぐため、日向での作業を長時間続けないように注意しながら、選択的な除草や草刈りの作業、生き物の観察などを実施しました。1時間ほどで終えるつもりでしたが、皆熱心で、結局1時間半ほど作業しました。

参加者(終了時)

公園管理者が実施しているような徹底した草刈りではなく、選択的な除草と部分的な草刈りなので、外を通る人には草ぼうぼうのままに見えるかもしれませんが、ビフォーとアフターを知っている我々には、かなり良くなったと見えます。公園の他の場所と比べて、昆虫などの生き物にとっても住みやすい場所になってきていると思います。外来植物も少ないです。

 

宣言下の全体活動

4月24日以降は全体活動を休止して、少人数での随時活動をしてきましたが、植物がどんどん成長する時期で、保護エリアの世話がとても間に合わないため、今日は、井の頭自然の会にも呼びかけて、久しぶりの全体活動を実施しました。今も緊急事態宣言中ですが、活動場所の百年森とミズタマソウ保護エリアは広いので、コロナ感染防止上必要とされている注意点を守れば、リスクは十分低いと判断しました。参加者は計7名、多すぎず少なすぎずの、ちょうど良い人数だったと思います。

除草作業中

おもな活動内容は、増えすぎて他の植物が育つのを邪魔してしまう在来植物(カナムグラ、アシボソ、ヤブミョウガなど)の間引きです。まだ残っている侵略的外来植物(トキワツユクサほか)の駆除もしました。最初の年(2019年度)と比べると大幅に減りましたが、侵略的と言われる外来植物はさすがにしぶとく、終わりはなかなか見えません。おそらく、終わりはないのだと思います。駆除を続けていればさすがに数が減るので、それぞれの植物の生存戦略を観察・理解し、対抗策を考えながら、楽しんで付き合っていくのが良いのだと思います。

間引いた在来植物はその場で腐らせ、土に還す

選択的除草では、作業後もスッキリした景色にはなりません。でも、今日やりたいと思っていたことはとりあえずできたので、気持ちの上ではスッキリしました。参加者の皆さん、お疲れ様でした。

非常事態宣言直前の活動

除草作業

植物がどんどん成長している百年森で、全体活動を実施しました。動植物の状態チェック、保護している植物の世話、外来植物の駆除、放置すると増えすぎる在来野草の一部除去などが活動内容でした。計8名が参加し、お互いの距離を十分に取るなど、感染予防対策に留意して活動しました。

しぶといトキワツユクサを除草

最初のころ(一昨年)と比べると外来植物は大幅に減ったのですが、除草を繰り返してもなかなか減らないものもあり、そういう植物の生き残るためのしくみにはいつも感心させられます。植物のさまざまな繁殖戦略を体感できるのも、自然観察を伴う保全活動の良いところだと思っています。人手をかけさえすれば、繁殖力の強い植物にも負けないのですが、コロナ禍で人をあまり集められないのが辛いところです。

ミズタマソウの世話

百年森の隣のミズタマソウエリアでも活動しました。写真はミズタマソウの生育を妨げる植物を摘み取っているところです。明日には緊急事態宣言が発出されるので、全体活動はできなくなります。とはいえ、世話をしないと大事な野草が他の草に埋もれてしまうので、宣言が解除されるまでは、必要最小限の世話を一人またはごく少人数でに続けることになります。

生きもの増加中

百年森の草刈り中

今日は井の頭自然の会と井の頭かんさつ会の合同で百年森の草刈りを実施しました。枯れた草が栄養になるのを促し、地面に光が届くようにして来春の芽生えを助けるのが目的です。人手による草刈りは少しずつ進めていて、写真の枯れた草は前回までに刈った草です。公園の他のエリアの、業者が機械で草刈りした場所と比べると雑然としていると感じると思いますが、いろいろな生き物が暮らせる場所を作るために、あえてそうしています。

クロコノマチョウ(成虫越冬)

その結果、まだ世話を始めて一年半ですが、見られる生き物が増えてきています。様々な草が生い茂り、いろいろな樹木が芽生え成長しています。表土には大きなミミズが増え、それを食べにモグラがやってきて、両者が固く締まっていた土を耕してくれています。土中の菌類も増えているようで、きのこもいろいろ出てきています。茂った草や咲いた花を拠り所とする昆虫が増え、それを捕食する虫も増えています。さらに、それらを採りに野鳥も立ち寄るようになりました。成長中の若木がもっと大きくなれば、それが隠れ場所になったり実をつけたりするので、訪れる鳥はもっと増えるでしょう。

2019年5月11日

まだまだ始まったばかりですが、徐々に生態系ができつつあるのを感じています。ここの世話を始めた昨年5月の写真を載せますが、大きく変化したことは分かると思います。今後も、百年森の目的である、「生き物最優先の場所」を目指して、必要な活動を続けていきます。

昆虫が増えるにつれて、虫採りを目的に柵を乗り越えて百年森に侵入する人が増えてきているようです。井の頭公園の柵に囲まれたエリアは、植物やその他の生き物を保護するための立入禁止の場所です。百年森も、柵の中には入らないで、柵の外から見守ってください。百年森に生き物が増えれば、そこへ出入りする生き物が、百年森の外でも見られるようになるでしょう。

猛暑下の活動

夏草の百年森

猛暑日が続いています。屋外活動には危険を感じるほどの暑さですが、植物はその高気温でどんどん伸びるので、我々もそう休んではいられません。百年森も、熱中症と新型コロナ感染症に注意しながら、小規模・分散型で除草などの世話を時々しています。とはいえやはり暑いので、今日は軽めの活動とし、現状観察(生き物観察)と、見つけた外来植物の除草をしました。これまでの選択的除草活動の効果で、外来植物はかなり減っています。

在来植物の種まき

そのほかに、公園内の他の場所で芽生えた(今の公園では)希少な在来野草の種子を採取してきて、百年森に蒔く作業もしました。雑木林の木が何本も枯れて伐採されたため、林床に多くの光が入るようになり、昔から眠っていた種子が芽生え、開花・結実したのです。

昔は公園内で普通に見られたのに、最近は見られなくなっていた野草がいろいろあり、その埋土種子が何かのきっかけで芽生えることがあります。そのままにしておくと草刈りで再び消えてしまうので、希少な在来植物は、我々の手で丁寧に除草をしている百年森に移植して、保護したいと考えています。