神田川の特定外来生物

12月19日のオオフサモ

井の頭池から流れ下る神田川に、外来生物法で「特定外来生物」に指定されている水草オオフサモが広がり始めていることに、12月に気づきました。神田川上流部には井の頭池や玉川上水とは違う面白い生態系があるので、しばしば自然観察をしていた場所なのですが、今年は酷暑でほとんど見に行かなかったため、気づくのが遅れました。特定外来生物に指定されている植物は繁殖力がとても強く、増えた時の被害も甚大です。まだ分布が小さいうちに駆除すべきです。

神田川に関わりのある知人に教えてもらい、管理者である北多摩南部建設事務所(略称:北南建)に連絡しました。「井の頭公園で外来植物の駆除活動をしている我々もできることは手伝いますので、駆除しましょう」とです。反応は期待以上に速く、業者との契約が済んだら、(我々の)アドバイスをもらって駆除します、と言ってもらえました。そして今日、駆除作業の実施日が決りました。参加予定者は、北南建の職員、業者の作業員、当会メンバー、そして亜大富士山クラブの学生さんたちです。

三度のかいぼりの結果、井の頭池の水がきれいになり、神田川にも澄み切った水が流れるようになりました。それなのに、川には空き缶やビニールなどのゴミがかなり落ちています。人手に余裕がありそうなので、オオフサモの駆除の邪魔にならなければ、ゴミ拾いもして、気持ちの良い川にしたいです。

じつは、神田川には以前から、やはり特定外来生物に指定されているオオカワヂシャが繁茂しているのですが、有効な対策は取られて来なかったようです。たぶんそのせいで、10年近く前までは確かにあった在来種カワヂシャを見かけなくなってしまいました。まだ生き残っている場所があるという話もあるので、オオカワヂシャの駆除とカワヂシャの保護もやりたいです。今後は、他の団体とも協力して、できるだけ多くの人の手で神田川を良くしていければと思っています。(Toshi)

冬の外来種除草

冬は外来植物を駆除する好機です。その勢いが弱まっている上、他の草が邪魔にならないので、除草すべき外来植物を見つけやすく、作業もしやすいからです。蚊などの害虫もいません。

掘り取ったブタナ

写真は、今後の全体活動で除草する場所を見て回ったついでに、一箇所で掘り取ったブタナのロゼット(注)115株と、他の場所で掘り取ったアメリカオニアザミ1株です。

タンポポにちょっと似ているブタナは凶悪なアメリカオニアザミと比べると可憐な草花ですが、繁殖力はとても強く、放っておくと、種子を風でどんどん散布し、一面に広がってしまいます。今回除草した場所を「ブタナのホットスポット」と呼んでいるのですが、たくさんの種子が吹き溜まって土中で眠っているらしく、除草しても次々に芽生えてきます。我々は昨年、西園野球場の周りにアメリカオニアザミやブタナが多数生えているのに気づき、除草を始めたのですが、もう一年遅かったら、このようなホットスポットがあちこちにできてしまい、手遅れになっていたと思っています。侵略的な外来種の駆除は、実害が出ていなくても、侵入に気づいたらすぐに始めることが重要です。

ところで最近、自分の判断で井の頭公園内の草を勝手に除草する人が少なからずいるようです。良かれと思ってのことでしょうが、たとえ害のある植物でも、無許可で動植物を採取することは東京都公園条例で禁止されていますので、やめてください。公園管理者も、状況が把握できないので困ると思います。我々は、公園管理者の許可を得て、それを示す腕章をして、外来植物の駆除をしています。また、その結果を管理課、および毎月の「井の頭外来生物問題協議会」に報告しています。

(注)ロゼット 草が主に冬の間、地面に平たく葉を広げている状態のこと。バラの花に感じが似ているのでこの呼び名がある。風を避け、陽光を効率よく受けて光合成し、できた栄養を根に蓄えて、春以降の生長に備える。

保護エリアの草刈り

除草開始時

本日の活動のメインは、写真の場所の草刈りでした。井の頭公園ではここでしか見られなくなった希少な在来野草を保護するために、春から秋にかけての定例の草刈りをしないようお願いし、自分たちで外来植物の除草などの世話をしてきたエリアです。もっと広い範囲で見ればものすごく希少な植物というわけではないのですが、同じエリアにあったもっと希少な植物が今年盗掘されてしまったので、ネット上では植物名を伏せておきます。貴重な植物が消える大きな原因が、草刈りと盗掘です。これまでは、その植物の地上部が枯れてから、公園の園芸職員に機械で草刈りをしていただいていました。地面まで日光が届かないと、春に芽生えられなくなるからです。しかし、先日植物調査をしたところ、78種が確認され、保護したい在来植物や、丁寧に除草すべき外来植物もあることが分かったため、今年は自分たちで種類を識別しながら手作業で草刈りをすることにしたのです。

除草終了時

池のザリガニワナの撤収を済ませた班も途中から合流し、3団体、総勢17名で、外来植物の除草と枯れた在来野草の草刈りに取り組んだ結果、2時間半ほどで予定を完了できました。新たに3種類の在来植物も見つかりました。

来年の春には、保護対象の植物を始め、いろいろな植物が芽生えるはずです。外来植物など、このエリアにふさわしくない植物の除草も必要になります。保護対象の植物だけを保護するのでなく、それが生える草地を保全したいと考えています。

連係プレー

ワナを川で洗って撤収

ひょうたん池に常設していたザリガニワナ、二種類計9基を12月8日(土)の保全活動時にすべて撤収しました。今年度の池の活動は終了で、再びワナを設置するのは、来年度4月になってからの予定です。

井の頭かんさつ会がザリガニワナを設置しているのは井の頭池の一角、ひょうたん池です。その小さな池に今年度は最大10基のワナを設置し、計574匹のアメリカザリガニを駆除しました。下表はこれまでの捕獲数です。

ザリガニ捕獲数
年度 捕獲数(匹) 備考
2018 574 前年度冬に
かいぼり29
2017 4,682
2016 3,052 前年度冬に
かいぼり27
2015 3,021
2014 5,280 前年度冬に
かいぼり25
2013 13 ワナ常設せず

ザリガニが多いときほどワナを増やして捕獲を頑張るので、この捕獲結果が池での生息数に比例しているわけでは必ずしもありませんが、今年度は前年度以前よりザリガニが大幅に減ったのは確実です。

井の頭池の他のエリアでは、井の頭かいぼり隊が今年は200基ほどのワナを設置してザリガニ駆除をしています。協議会での報告によると、今年度は当会が捕獲した数の約6.4倍のザリガニを捕獲したそうです。捕獲総数では敵いませんが、我々の捕獲数はワナの数の割には多いと思います。水深が浅いひょうたん池はザリガニが好む環境である上に、我々がワナをほぼ毎日チェックしているからでしょう。ワナの入り口は入りやすく出にくい形状ですが、脱出するものもいるのです。

今年度ザリガニが減ったのは井の頭かいぼり隊と井の頭かんさつ会がザリガニ駆除を頑張ったから、と言いたいところですが、それだけでは、今年急に減った理由の説明にはなりません。私は、池に増えた在来生物の活躍も大きいと考えています。かいぼり後にはザリガニが増えるのが常ですが、在来の小魚も増えます。そしてそれらを餌にするカイツブリが何組もやってきて子育てをし、多くのヒナを誕生させました。2016年度の冬にはじつに多くの稚ザリガニがいたのですが、2017年度にはカイツブリたちがせっせと小さなザリガニを食べました。私が観察した時は、捕ってくる生き物の半分以上が小さなザリガニでした。ナマズやハゼ類、そしてたぶんギンブナも、親から離れて間もない稚ザリガニをよく食べます。春にはたくさん獲れたザリガニでしたが、夏ごろにはあまり獲れなくなりました。そして、かいぼり29後の2018年度もザリガニはあまり増えなかったのです。つまり、稚ザリガニを在来魚たちが、小さなザリガニをカイツブリが、そして大きなザリガニを人間がせっせと駆除した結果、井の頭池のザリガニが激減した、というのが私の説です。

生き物たちと人間との連係プレーはとても有効です。でも、もしそのうちのどれかがザリガニを獲るのをやめたら、ザリガニは再び数を回復するでしょう。(Toshi)

トキワツユクサ結実型 除草

今日の保全活動の最後に、公園の一角の外来植物トキワツユクサ(結実型)を除草しました。トキワツユクサには、種子ができない非結実型と、種子ができる結実型があります。茎を延ばして広がる能力は非結実型のほうが高く、井の頭公園でも各所に繁茂しています。我々もこれまでは重要な場所の非結実型を優先的に除草してきました。しかし、結実型は埋土種子を作るため、除草してもしつこく芽生えてくるので、完全駆除は非結実型よりはるかに困難です。広がる前に駆除することが重要なので、除草を行いました。今回の場所では想像していたより広がっていたので驚きました。

小魚がいっぱい

皆が見ているのは、下の写真のように、橋の下に小魚が密集しているからです。(下の写真は光の具合が良い別の日に撮りました。) 何が集まっているのかは、こちらの水中映像を観てください。ギンブナの若魚(今年生まれ)とモツゴです。スジエビも映っていますね。

かいぼりの結果、在来種の小魚がとても増えました。池で活動している我々はよく知っているのですが、何しろ水中のこと、岸から見るだけの来園者には分かってもらえませんでした。でも、この小魚の大群は橋からよく見えるので、かいぼりの効果を実感してもらえます。

でも、小魚を見るとすぐに「メダカだ!」と言う人が多いのにはちょっと・・・

 

 

アメリカオニアザミのロゼット

御殿山駐車場の北隣で見つけたアメリカオニザ ミのロゼット(地面に葉を広げている状態のもの)を、今日の保全活動で学生さんたちと掘りました。それを並べたのが下の写真で、43 株ありました。発見時に 16 株掘り取ったので、ここになんと計59 株も生えていたことになります。

アメリカオニアザミは凶悪な棘を持つ大型の外来植物です。ロゼットにも痛い棘がびっしり生えているので、手袋が必需品。今年は園内での駆除に力を入れたのに、まだこんなに残っていて驚きました。でも、結実して種子をまき散らす前に除草できれば、こちらの勝ちです。

 

モツゴの産卵

【お知らせ】この記事は、旧活動ブログに載せた記事です。2014年4月23日までの記事はその井の頭かんさつ会活動ブログにあります。(2019年1月28日)

12日にモツゴを放した増殖いけすで、16日にはさっそく産卵が確認されました。その後も順調に産卵が続き、23日現在、3つの産卵床(調味料入れ、歯ブラシ立て、素焼きの植木鉢)に卵があります。

モツゴの卵

右の写真は、最初に産卵が始まった調味料入れです。つり下げられて下になった部分にびっしりと卵が産み付けられています。モツゴはなぜかこの容器が好きなようで、昨年最初に産卵したのもこの容器でした。

 

卵を守るオス

モツゴのオスは卵を懸命に守ります。他の魚などに食べられないよう守るだけでなく、卵が汚れて発生や孵化の障害にならないように常に掃除を怠りません。そのようすを撮影した映像から切り出した一枚が右の写真です。

 

発眼した卵

卵は順調に発生を続けているようで、眼ができている卵がかなりありました。孵化した仔魚が成魚に食べられてしまわないように、産卵床を網目の細かい仔魚いけすに移し、そこで孵化させます。親魚を一緒に引っ越しさせるのは難しいので、親の保護がなくなりますが、卵が発眼していれば問題なく孵化します。後に産み付けられた卵は発眼していませんが、卵が汚れなければ大丈夫だと昨年の経験で分かりました。