と言っても、屋内での話です。昨年カワヂシャを育てたバケツの隣にあった植木鉢にこばれた種子が11月ごろ発芽し始めました。少し大きくなったものをコップに植え替えて、窓辺に置いていたところ、今日、花を咲かせ始めているのに気づいたのです。花の下方には結実し始めている実も複数ありましたから、年明け早々に咲き始めたようです。
カワヂシャは、昆虫などの花粉媒介者がいなくても自花受粉ができます。そして、同じ花の花粉でも結実します。2019年に神田川の上流部(三鷹台駅の鉄橋まで)でカワヂシャを探した時は、13株しか見つかりませんでした。その10年以上前に探した時も外来植物のオオカワヂシャがほとんどで、カワヂシャは遥かに少なく、絶滅は時間の問題だと思っていました。それなのにかろうじて生き延びていたのは、自家受粉で結実できる能力のおかげだったのだと、昨年育ててみて分かりました。
とても育てやすい、つまりとても育ちやすい植物なのに、神田川で絶滅しようとしていたのは、侵入した外来種オオカワヂシャのせいです。オオカワヂシャはカワヂシャより草丈が高く、たくさんの花を咲かせます。個々の花も大きいので、訪花昆虫をより強く惹きつけます。もし昆虫がオオカワヂシャの花粉をカワヂシャのめしべに着けると、その花は結実できません。自花受粉の能力も役立たなくなるのです。かくして、カワヂシャは徐々に数を減らしていたわけです。
昨年は種子から育てた苗を上流部に補植しました。しかしそれらは同一株内の自家受粉でできた種子だったので、多様性に難があります。幸い、川で生き残っている株が少しあるし、かいぼり後に井の頭池で復活した株もあります。それらとの間で遺伝子交換がなされると良いと思っています。
個体数に少し余裕ができたので、今後は補植でなく、オオカワヂシャの駆除を上流側から少しづつ進めることで、カワヂシャの増加を助けたいと思っています。