池と川のつながり

堰の横壁を登るエビ

暖かかった今夜、スジエビやシナヌマエビが水門橋の堰をよじ登っているのが見られました。この堰より上流が井の頭池で、下流が神田川です。エビたちは川から池へ遡上しているのです。たとえばスジエビは、メスがお腹に抱えていた卵を放出するとき孵化します。孵化したばかりの幼生は浮遊するプランクトンなので、そのうちのかなりの割合が井の頭池から神田川に流下するはずです。そして川で成長したものが、ふたたび井の頭池へと遡上してくるのでしょう。

しかし、神田川にはこの堰だけでなく、夕やけ橋の下流には落差1mほどの滝(落差工)があり、もっと下流にも遡上の障害になる地形があります。本当にそのような障害を乗り越えられるのでしょうか。どれぐらいの数のスジエビが遡上してくるのか調べるため、昨年の7月の夕方、水門橋の上流側に張り網を下流側へ向けて設置しました。翌朝の活動時にチェックしたら、753匹ものスジエビが入っていました。張り網の周囲には隙間があるので、くぐり抜けて上流へ向かったものや、上流から来て網に入ったものがいる可能性もありますが、たくさんのスジエビが遡上してきていることが分かりました。我々が想像していなかった数ですが、写真のような光景を目撃すると頷けます。

井の頭池と神田川を行き来するのはスジエビだけではありません。クロダハゼも堰をよじ登っているのを見かけるし、時々池で見つかるモクズガニやウナギも、それらの生態からすると、神田川から遡上してきているはずです。かいぼり後に池で見られるようになったオイカワも、神田川で見かけるようになった数年後に池で見つかったので、流れ落ちる水を泳ぎ切って遡上したのだと思います。望ましくないほうでは、外来種のシナヌマエビやアメリカザリガニ、ミシシッピアカミミガメなども遡上して、あるいは陸上を歩いて池にやってきます。しかし、いちばん来てほしくないオオクチバスとブルーギルは、滝や堰に阻まれて遡上してこれないようで、だからこそ、かいぼりをする意味があるのです。