冬の外来種除草

冬は外来植物を駆除する好機です。その勢いが弱まっている上、他の草が邪魔にならないので、除草すべき外来植物を見つけやすく、作業もしやすいからです。蚊などの害虫もいません。

掘り取ったブタナ

写真は、今後の全体活動で除草する場所を見て回ったついでに、一箇所で掘り取ったブタナのロゼット(注)115株と、他の場所で掘り取ったアメリカオニアザミ1株です。

タンポポにちょっと似ているブタナは凶悪なアメリカオニアザミと比べると可憐な草花ですが、繁殖力はとても強く、放っておくと、種子を風でどんどん散布し、一面に広がってしまいます。今回除草した場所を「ブタナのホットスポット」と呼んでいるのですが、たくさんの種子が吹き溜まって土中で眠っているらしく、除草しても次々に芽生えてきます。我々は昨年、西園野球場の周りにアメリカオニアザミやブタナが多数生えているのに気づき、除草を始めたのですが、もう一年遅かったら、このようなホットスポットがあちこちにできてしまい、手遅れになっていたと思っています。侵略的な外来種の駆除は、実害が出ていなくても、侵入に気づいたらすぐに始めることが重要です。

ところで最近、自分の判断で井の頭公園内の草を勝手に除草する人が少なからずいるようです。良かれと思ってのことでしょうが、たとえ害のある植物でも、無許可で動植物を採取することは東京都公園条例で禁止されていますので、やめてください。公園管理者も、状況が把握できないので困ると思います。我々は、公園管理者の許可を得て、それを示す腕章をして、外来植物の駆除をしています。また、その結果を管理課、および毎月の「井の頭外来生物問題協議会」に報告しています。

(注)ロゼット 草が主に冬の間、地面に平たく葉を広げている状態のこと。バラの花に感じが似ているのでこの呼び名がある。風を避け、陽光を効率よく受けて光合成し、できた栄養を根に蓄えて、春以降の生長に備える。

保護エリアの草刈り

除草開始時

本日の活動のメインは、写真の場所の草刈りでした。井の頭公園ではここでしか見られなくなった希少な在来野草を保護するために、春から秋にかけての定例の草刈りをしないようお願いし、自分たちで外来植物の除草などの世話をしてきたエリアです。もっと広い範囲で見ればものすごく希少な植物というわけではないのですが、同じエリアにあったもっと希少な植物が今年盗掘されてしまったので、ネット上では植物名を伏せておきます。貴重な植物が消える大きな原因が、草刈りと盗掘です。これまでは、その植物の地上部が枯れてから、公園の園芸職員に機械で草刈りをしていただいていました。地面まで日光が届かないと、春に芽生えられなくなるからです。しかし、先日植物調査をしたところ、78種が確認され、保護したい在来植物や、丁寧に除草すべき外来植物もあることが分かったため、今年は自分たちで種類を識別しながら手作業で草刈りをすることにしたのです。

除草終了時

池のザリガニワナの撤収を済ませた班も途中から合流し、3団体、総勢17名で、外来植物の除草と枯れた在来野草の草刈りに取り組んだ結果、2時間半ほどで予定を完了できました。新たに3種類の在来植物も見つかりました。

来年の春には、保護対象の植物を始め、いろいろな植物が芽生えるはずです。外来植物など、このエリアにふさわしくない植物の除草も必要になります。保護対象の植物だけを保護するのでなく、それが生える草地を保全したいと考えています。

トキワツユクサ結実型 除草

今日の保全活動の最後に、公園の一角の外来植物トキワツユクサ(結実型)を除草しました。トキワツユクサには、種子ができない非結実型と、種子ができる結実型があります。茎を延ばして広がる能力は非結実型のほうが高く、井の頭公園でも各所に繁茂しています。我々もこれまでは重要な場所の非結実型を優先的に除草してきました。しかし、結実型は埋土種子を作るため、除草してもしつこく芽生えてくるので、完全駆除は非結実型よりはるかに困難です。広がる前に駆除することが重要なので、除草を行いました。今回の場所では想像していたより広がっていたので驚きました。

アメリカオニアザミのロゼット

御殿山駐車場の北隣で見つけたアメリカオニザ ミのロゼット(地面に葉を広げている状態のもの)を、今日の保全活動で学生さんたちと掘りました。それを並べたのが下の写真で、43 株ありました。発見時に 16 株掘り取ったので、ここになんと計59 株も生えていたことになります。

アメリカオニアザミは凶悪な棘を持つ大型の外来植物です。ロゼットにも痛い棘がびっしり生えているので、手袋が必需品。今年は園内での駆除に力を入れたのに、まだこんなに残っていて驚きました。でも、結実して種子をまき散らす前に除草できれば、こちらの勝ちです。