百年森の三年

百年森パノラマ

西園の一角にある「百年森」は、生き物最優先の場所にしたいと、2019年の5月11日に3団体共同で世話を始めてから三年になります。その隣にあるミズタマエリア(ミズタマソウ保護エリア)はもう少し早くから関わっていますが、今は一体と考えて同時に世話をしています。

エザ
エゾノギシギシの根

今日は明け方まで雨だったので、作業は控えめにして、状態チェックや生き物観察を中心に活動しました。とはいえ、気になった外来植物の駆除も少しやりました。写真は巨大な葉をつけていたエゾノギジギシで、根も巨大でした。こんなに大きくなるまで掘り取っていなかったのは、単に同定をサボっていたからです。

両エリアとも、トキワツユクサやハルジオンなど、しつこい種類はまだ残っていますが、外来植物を積極的に除去してきたので、公園の他のエリアと比べるとかなり少ないです。また、園内で見つけた希少な在来植物を草刈りされる前に救出して、ここに移植する活動もしてきました。今では在来植物の種類がだいぶ増えています。ミズタマエリアは最初は「ミズタマソウ保護エリア」と読んでいました。井の頭公園ではここにしか無かったミズタマソウを保護するために囲ってもらったエリアだからです。しかし保護している植物が増えたので、長い名前は使いにくいこともあり、呼称を短縮しました。

ヒダリマキマイマイ

写真はミズタマエリアにいたヒダリマキマイマイの一部です。生息数が減っているという、地上性のカタツムリですが、玉川上水沿いの樹林と連続しているこの場所には多数生息しています。今日は雨上がりなので、よく見て歩かないと踏み潰しそうなほど出歩いていました。

若木も育ってきた

百年森という名前も、短い呼称がほしくて我々が名づけたものです。良い環境に育てるには何年もかかるので、次の世代、そのまた次の世代と活動を引き継いでいってほしいのです。まだ百分の三しか経っていませんが、しだいに環境の複雑さが増し、生き物が増えています。百年森は玉川上水とは少しだけ離れていますが、多様な生き物が暮らせる環境として、お互いに補い合う場所になってほしいと願っています。

コロナ禍+猛暑下の全体活動

猛暑の夏は、熱中症を防ぐため、保全活動(=野外での活動)を控えめにしているのですが、新型コロナが収まらない今年は、大勢での活動がさらに難しくなっています。そのため、必要最小限の(実態はそれに及ばない)活動を少人数かつ短時間でたまに実施するにとどめています。しかし、植物はコロナにも暑さにも関係なく成長を続けているため、百年森も草がかなり茂ってきました。時間をおくほど世話が大変になるので、井の頭かんさつ会と井の頭自然の会のメンバーに声をかけて、久しぶりの全体活動を実施しました。参加者は計8名でした。

分散して作業

感染力が強いデルタ株への感染が増えているそうなので、お互いの距離を開けるなど感染対策を徹底し、さらには熱中症を防ぐため、日向での作業を長時間続けないように注意しながら、選択的な除草や草刈りの作業、生き物の観察などを実施しました。1時間ほどで終えるつもりでしたが、皆熱心で、結局1時間半ほど作業しました。

参加者(終了時)

公園管理者が実施しているような徹底した草刈りではなく、選択的な除草と部分的な草刈りなので、外を通る人には草ぼうぼうのままに見えるかもしれませんが、ビフォーとアフターを知っている我々には、かなり良くなったと見えます。公園の他の場所と比べて、昆虫などの生き物にとっても住みやすい場所になってきていると思います。外来植物も少ないです。

 

宣言下の全体活動

4月24日以降は全体活動を休止して、少人数での随時活動をしてきましたが、植物がどんどん成長する時期で、保護エリアの世話がとても間に合わないため、今日は、井の頭自然の会にも呼びかけて、久しぶりの全体活動を実施しました。今も緊急事態宣言中ですが、活動場所の百年森とミズタマソウ保護エリアは広いので、コロナ感染防止上必要とされている注意点を守れば、リスクは十分低いと判断しました。参加者は計7名、多すぎず少なすぎずの、ちょうど良い人数だったと思います。

除草作業中

おもな活動内容は、増えすぎて他の植物が育つのを邪魔してしまう在来植物(カナムグラ、アシボソ、ヤブミョウガなど)の間引きです。まだ残っている侵略的外来植物(トキワツユクサほか)の駆除もしました。最初の年(2019年度)と比べると大幅に減りましたが、侵略的と言われる外来植物はさすがにしぶとく、終わりはなかなか見えません。おそらく、終わりはないのだと思います。駆除を続けていればさすがに数が減るので、それぞれの植物の生存戦略を観察・理解し、対抗策を考えながら、楽しんで付き合っていくのが良いのだと思います。

間引いた在来植物はその場で腐らせ、土に還す

選択的除草では、作業後もスッキリした景色にはなりません。でも、今日やりたいと思っていたことはとりあえずできたので、気持ちの上ではスッキリしました。参加者の皆さん、お疲れ様でした。

非常事態宣言直前の活動

除草作業

植物がどんどん成長している百年森で、全体活動を実施しました。動植物の状態チェック、保護している植物の世話、外来植物の駆除、放置すると増えすぎる在来野草の一部除去などが活動内容でした。計8名が参加し、お互いの距離を十分に取るなど、感染予防対策に留意して活動しました。

しぶといトキワツユクサを除草

最初のころ(一昨年)と比べると外来植物は大幅に減ったのですが、除草を繰り返してもなかなか減らないものもあり、そういう植物の生き残るためのしくみにはいつも感心させられます。植物のさまざまな繁殖戦略を体感できるのも、自然観察を伴う保全活動の良いところだと思っています。人手をかけさえすれば、繁殖力の強い植物にも負けないのですが、コロナ禍で人をあまり集められないのが辛いところです。

ミズタマソウの世話

百年森の隣のミズタマソウエリアでも活動しました。写真はミズタマソウの生育を妨げる植物を摘み取っているところです。明日には緊急事態宣言が発出されるので、全体活動はできなくなります。とはいえ、世話をしないと大事な野草が他の草に埋もれてしまうので、宣言が解除されるまでは、必要最小限の世話を一人またはごく少人数でに続けることになります。

生きもの増加中

百年森の草刈り中

今日は井の頭自然の会と井の頭かんさつ会の合同で百年森の草刈りを実施しました。枯れた草が栄養になるのを促し、地面に光が届くようにして来春の芽生えを助けるのが目的です。人手による草刈りは少しずつ進めていて、写真の枯れた草は前回までに刈った草です。公園の他のエリアの、業者が機械で草刈りした場所と比べると雑然としていると感じると思いますが、いろいろな生き物が暮らせる場所を作るために、あえてそうしています。

クロコノマチョウ(成虫越冬)

その結果、まだ世話を始めて一年半ですが、見られる生き物が増えてきています。様々な草が生い茂り、いろいろな樹木が芽生え成長しています。表土には大きなミミズが増え、それを食べにモグラがやってきて、両者が固く締まっていた土を耕してくれています。土中の菌類も増えているようで、きのこもいろいろ出てきています。茂った草や咲いた花を拠り所とする昆虫が増え、それを捕食する虫も増えています。さらに、それらを採りに野鳥も立ち寄るようになりました。成長中の若木がもっと大きくなれば、それが隠れ場所になったり実をつけたりするので、訪れる鳥はもっと増えるでしょう。

2019年5月11日

まだまだ始まったばかりですが、徐々に生態系ができつつあるのを感じています。ここの世話を始めた昨年5月の写真を載せますが、大きく変化したことは分かると思います。今後も、百年森の目的である、「生き物最優先の場所」を目指して、必要な活動を続けていきます。

昆虫が増えるにつれて、虫採りを目的に柵を乗り越えて百年森に侵入する人が増えてきているようです。井の頭公園の柵に囲まれたエリアは、植物やその他の生き物を保護するための立入禁止の場所です。百年森も、柵の中には入らないで、柵の外から見守ってください。百年森に生き物が増えれば、そこへ出入りする生き物が、百年森の外でも見られるようになるでしょう。

猛暑下の活動

夏草の百年森

猛暑日が続いています。屋外活動には危険を感じるほどの暑さですが、植物はその高気温でどんどん伸びるので、我々もそう休んではいられません。百年森も、熱中症と新型コロナ感染症に注意しながら、小規模・分散型で除草などの世話を時々しています。とはいえやはり暑いので、今日は軽めの活動とし、現状観察(生き物観察)と、見つけた外来植物の除草をしました。これまでの選択的除草活動の効果で、外来植物はかなり減っています。

在来植物の種まき

そのほかに、公園内の他の場所で芽生えた(今の公園では)希少な在来野草の種子を採取してきて、百年森に蒔く作業もしました。雑木林の木が何本も枯れて伐採されたため、林床に多くの光が入るようになり、昔から眠っていた種子が芽生え、開花・結実したのです。

昔は公園内で普通に見られたのに、最近は見られなくなっていた野草がいろいろあり、その埋土種子が何かのきっかけで芽生えることがあります。そのままにしておくと草刈りで再び消えてしまうので、希少な在来植物は、我々の手で丁寧に除草をしている百年森に移植して、保護したいと考えています。

百年森の二年目

井の頭かんさつ会と井の頭 自然の会の共同で、百年森の世話をしました。新型コロナウイルス感染症の非常事態宣言や外出自粛要請、都立公園の利用自粛要請が出ていたため、百年森での全体活動は今年度まだ2回目です。それらが解除された現在も、都立公園でのボランティア活動自粛要請は続いているのですが、植物がどんどん成長している季節に何もしないでいると、これまで積み重ねてきた努力が台無しになるので、感染防止策をきちんと行うことを条件に、小規模分散型の活動を認めてもらっています。今日は「小規模」と言うにはやや多めの人数でしたが、百年森は広いので、十分な対人距離を確保しながら作業しました。さらに、隣の「ミズタマソウ保護エリア」にも参加者を分散して活動しました。

選択的除草作業中(北から見る)
向かいの白っぽい建物はトイレ改修工事の現場事務所で、7月中に撤去される予定

おもな活動内容は、外来植物除草、放っておくと繁殖しすぎる在来植物の間引き(抜き取りや草刈り)、植物や昆虫などの調査です。我々がこの場所の世話を始めてから一年ちょっと経ちました。活動の効果もあって、最初に芽生えた植物と、現在生えている植物とではかなり違ってきています。いろいろな樹木も芽生え育っています。公園の他の場所から移植した野草や樹木も根付いています。そして、そのような植生の変化に連れて、見られる昆虫などの動物も変化してきています。簡単に言うと、少しずつですが、良い生態系になってきているということです。

百年森とは

百年森を視察

本日12月28日(土)は2019年最後の活動日。用具物置の大掃除を済ませてから、参加者全員で百年森へ行き、今年の活動の成果を確認するとともに、今後やるべきことについて考えました。

これまで百年森とはいったい何なのかを説明せずに記事を書いてきたので、説明をしたいと思います。

文学施設建設計画

百年森は、井の頭公園の西園の、万助橋側入口から入って右側すぐのところにある、ロープ柵で囲われたエリアです。元は「資材置き場」とか「管理ヤード」などと呼ばれ、公園管理で出る廃材などを一時的に貯留する場所でした。新たな管理ヤードが近くにできて不要になったこの場所に、三鷹市が文学施設を建設する方針が2018年に突然示されました。その方針には、この場所の価値を理解していた団体や市民から多くの反対意見が出されました。当会もそのひとつで、我々としては、井の頭公園の中でもとくに多様な生き物が生息する、草木が茂り湿潤な玉川上水沿いの緑と、西園のおもに人間が利用する明るく乾燥したエリアとの間を緩やかに繋ぐ、環境緩衝機能の重要さをとくに重視していました。同様な意見を持つ複数の団体と協力して、当時の三鷹市長に意見書を提出するなどの反対運動を続けた結果、市長の理解が得られ、文学施設建設計画は撤回されたのです。

百年森の実現

それを受けて我々は、そこをより価値ある場所、すなわち、環境緩衝機能をさらに強化し、その場所自体を生き物最優先の場所にするよう、管理者である西部公園緑地事務所の所長にお願いしました。我々にできる世話はやりますから、という約束付きでです。その願いが受け入れられ、必要最低限の整備工事が行われ、2019年の5月から、当会と井の頭 自然の会、そして亜大富士山クラブが協力して世話をすることになりました。

百年森という名称

「百年森」という名前は、活動のためにはどの場所のことかすぐに分かる短い呼称が必要と考えて、当会と自然の会で付けた名前で、管理者が正式に認めた名称ではありません。しかし、管理者への活動報告などには、その名称を用いています。なお、「百年森」は公園内など自明な範囲で用いる略称で、「井の頭百年森」が正式名称ということになっています。「百年」と付けたのは、長い年月、いく世代にも渡って、生き物たちにとってより良い場所に育てていってほしい、という願いを込めました。なお、「百年森」としましたが、必ずしも鬱蒼とした森を目指しているわけではありません。今後世話に関わってくれる人たちに決めてもらえればよいと考えています。

百年森の一年目

日光浴をするキタテハ(成虫越冬)

世話を始めてからまだ半年ちょっとですが、その短い間にも、百年森はしだいに良い自然環境になってきたと感じています。公園内の側溝など各所から持ってきて山積みされていた土を敷きならしたので、それに混じっていた外来植物などの種子がすごい勢いで次々に芽生えましたが、選択的な除草を丁寧に繰り返した結果、外来植物は大幅に減り、在来植物が優先する場所になりました。草で覆われ、実生木も生えてきたので、そのような環境を好む虫が増えました。それを目当てにやってくる上位の昆虫や爬虫類、鳥なども見られるようになっています。そのような変化を見られるのも、継続的に世話をしている楽しみのひとつです。

百年森の冬の活動

外来種除草作業

12月14日(土)は、毎月恒例の百年森の三団体合同活動でした。枯れた草の刈り取りなどの冬支度は11月30日の活動で済んでいるので、この日は残っている外来植物の除草を実施しました。例えばトキワツユクサは常緑性なので、冬の間も光合成をして茎や葉を伸ばします。ロゼットの形で、つまり地面に張り付くように葉を広げて光合成を続け、春以降の生長のために栄養を蓄える外来植物もあります。冬は多くの草木が枯れているし、邪魔する蚊などの害虫もいないので、外来植物を減らす作業には良い時期です。

百年森で除草したトキワツユクサなど

写真が百年森で除草した外来植物で、そのほとんどがトキワツユクサです。結実しない種類も種子を作る種類も生えていました。一度や二度の除草ではどうしても残ってしまい、油断すると勢いを取り戻すので、冬の間も時々チェックが必要です。

この日はその後に他の場所へも行き、別の外来野草のロゼットの掘り取りも実施しました。冬にやるべきことや、冬にやったほうが効果的なことはいろいろあります。

百年森の草刈り

百年森の草刈り

11月最後の活動日は好天に恵まれたので、井の頭 自然の会にも声をかけて、百年森の草刈りを実施しました。合同の活動日は12月にも予定されているのですが、その日が好天とは限りません。両会から計7名の参加でした。

昆虫などは越冬の準備ができたようで、ほぼ姿を消したので、春の芽生えがしやすいように、今回はすっきり目に草を刈りました。それでも、産卵を済ませ命を終えようとしているジョロウグモや、成虫越冬のクビキリギスなどが見つかりました。冬を越す虫たちのために、刈った草は複数箇所に積み置きました。

草刈り後の百年森

空気が冷たいため、汗をかくと作業後に冷えてしまいます。頑張らないようにと言ったのですが、皆とても頑張ってくれたので、近くの「ミズタマソウ保護エリア」の草刈りも含め、やりたかった作業をほぼ終えることができました。

でも、12月の合同活動でやることがなくなったのでは?という心配は要りません。冬の間にやっておくべきことはまだあります。