百年森の二年目

井の頭かんさつ会と井の頭 自然の会の共同で、百年森の世話をしました。新型コロナウイルス感染症の非常事態宣言や外出自粛要請、都立公園の利用自粛要請が出ていたため、百年森での全体活動は今年度まだ2回目です。それらが解除された現在も、都立公園でのボランティア活動自粛要請は続いているのですが、植物がどんどん成長している季節に何もしないでいると、これまで積み重ねてきた努力が台無しになるので、感染防止策をきちんと行うことを条件に、小規模分散型の活動を認めてもらっています。今日は「小規模」と言うにはやや多めの人数でしたが、百年森は広いので、十分な対人距離を確保しながら作業しました。さらに、隣の「ミズタマソウ保護エリア」にも参加者を分散して活動しました。

選択的除草作業中(北から見る)
向かいの白っぽい建物はトイレ改修工事の現場事務所で、7月中に撤去される予定

おもな活動内容は、外来植物除草、放っておくと繁殖しすぎる在来植物の間引き(抜き取りや草刈り)、植物や昆虫などの調査です。我々がこの場所の世話を始めてから一年ちょっと経ちました。活動の効果もあって、最初に芽生えた植物と、現在生えている植物とではかなり違ってきています。いろいろな樹木も芽生え育っています。公園の他の場所から移植した野草や樹木も根付いています。そして、そのような植生の変化に連れて、見られる昆虫などの動物も変化してきています。簡単に言うと、少しずつですが、良い生態系になってきているということです。

最後のオオブタクサ?

抜き取ったオオブタクサ

「小鳥の森」の西隣のエリアで今日抜き取ったオオブタクサです。重点対策外来種に指定されている侵略的な(つまり繁殖力の強い)外来植物で、神田川には繁茂しています。しかし私が知る限り、井の頭公園内ではここにしか生えていません。この6メートル✖︎3メートルほどの狭いエリアに、10年ほど前に気づいた時には20〜30本ほど生えていました。

その時も全部抜き取ったのですが、その後も毎年生えてきます。埋土種子が多数あったのでしょう。生えてくるものを毎年、種子ができる前に抜き取り続けたところ、生えてくる数は年々減少しました。埋土種子が無くなれば駆除完了です。ところが数年前、うっかりしていて、チェックするのが遅れ、数本のオオブタクサが種子を散布するのを許してしまいました。当然、次の年には再び多くの芽生えが出てきて、完全駆除の達成が遠のいてしまいました。それでもあきらめずに毎年抜き取りを続けた結果、昨年芽生えたのは3本、そして今年はこの1本だけになりました。これがこの場所の最後のオオブタクサであることを願っています。

ここは面積が狭く、生えていた数も限られていました。オオブタクサは多数の種子を作りますが、風や鳥に運ばれることはなさそうです。川だと水に流されて分布を拡大するけれど、ここではその心配はありません。完全駆除が成功しやすい条件だと思いますが、それでも、ほぼ駆除達成までに10年ほどもかかったのです。井の頭公園でなぜここにだけ生えたのか不明ですが、侵略的な外来植物は持ち込まないのがいちばんの対策です。(Toshi)

植物に活動自粛なし

新型コロナウイルス対策のため、当会も定例の保全活動を3月以降休止しています。しかし、植物が成長を始めてからは、保護植物の世話だけはごく少人数で、必要最小限続けてきました。植物は活動自粛をしてくれないので、放置しておくと、繁殖力のある他の植物に日光や生育場所を奪われて、我々が保護対象としているか弱い在来植物が衰退してしまうからです。例えば写真の場所では、時々草取りをしたので、オオジシバリ(写真奥)、ムラサキサギゴケ(中央)、およびジシバリ(別名イワニガナ)の三種が綺麗な花を咲かせてくれました。

ひょうたん池北岸の植物保護柵

いずれも井の頭公園ではほとんど見られなくなっていた在来植物で、園内の自生場所から一部を移植したものです。その目的はおもに次の三つです。

  1. 池への表土流失防止
  2. 自生場所が破壊された場合の予備
  3. 来園者の啓発

園内では業者による草刈りが年に数回行われるのですが、貴重な植物がなかったときは、地面まで刈り払われることが多く、裸地化して表土が雨水とともに池へ流出していました。それは岸辺にとっても池の水質にも良くありません。そこで、園内で見つけた希少な在来植物の一部をここに移植して世話をすることで、岸辺の裸地化を防ぎたいと考えたのです。公園管理者が認めてくれれば、保護柵内の除草などの世話は当会がするので、過度な草刈りを防ぐことができます。

公園を訪れる人の多くは豊かな緑に惹かれて来るのですが、園内に生えている多くの植物のうち、どれが貴重な植物で、どれが望ましくない植物かを知っている人は多くありません。貴重な植物を園路沿いに植えて見られるようにすれば、多くの人に知ってもらうことができます。外出自粛要請が出ていても、健康維持のための散歩に来園する人は多く、花に気づいて足を止める人や、写真を撮っている人がけっこう見られました。

明後日25日から5月6日まで「ステイホーム週間」とのこと。少人数での活動もその間は自粛予定です。

百年森とは

百年森を視察

本日12月28日(土)は2019年最後の活動日。用具物置の大掃除を済ませてから、参加者全員で百年森へ行き、今年の活動の成果を確認するとともに、今後やるべきことについて考えました。

これまで百年森とはいったい何なのかを説明せずに記事を書いてきたので、説明をしたいと思います。

文学施設建設計画

百年森は、井の頭公園の西園の、万助橋側入口から入って右側すぐのところにある、ロープ柵で囲われたエリアです。元は「資材置き場」とか「管理ヤード」などと呼ばれ、公園管理で出る廃材などを一時的に貯留する場所でした。新たな管理ヤードが近くにできて不要になったこの場所に、三鷹市が文学施設を建設する方針が2018年に突然示されました。その方針には、この場所の価値を理解していた団体や市民から多くの反対意見が出されました。当会もそのひとつで、我々としては、井の頭公園の中でもとくに多様な生き物が生息する、草木が茂り湿潤な玉川上水沿いの緑と、西園のおもに人間が利用する明るく乾燥したエリアとの間を緩やかに繋ぐ、環境緩衝機能の重要さをとくに重視していました。同様な意見を持つ複数の団体と協力して、当時の三鷹市長に意見書を提出するなどの反対運動を続けた結果、市長の理解が得られ、文学施設建設計画は撤回されたのです。

百年森の実現

それを受けて我々は、そこをより価値ある場所、すなわち、環境緩衝機能をさらに強化し、その場所自体を生き物最優先の場所にするよう、管理者である西部公園緑地事務所の所長にお願いしました。我々にできる世話はやりますから、という約束付きでです。その願いが受け入れられ、必要最低限の整備工事が行われ、2019年の5月から、当会と井の頭 自然の会、そして亜大富士山クラブが協力して世話をすることになりました。

百年森という名称

「百年森」という名前は、活動のためにはどの場所のことかすぐに分かる短い呼称が必要と考えて、当会と自然の会で付けた名前で、管理者が正式に認めた名称ではありません。しかし、管理者への活動報告などには、その名称を用いています。なお、「百年森」は公園内など自明な範囲で用いる略称で、「井の頭百年森」が正式名称ということになっています。「百年」と付けたのは、長い年月、いく世代にも渡って、生き物たちにとってより良い場所に育てていってほしい、という願いを込めました。なお、「百年森」としましたが、必ずしも鬱蒼とした森を目指しているわけではありません。今後世話に関わってくれる人たちに決めてもらえればよいと考えています。

百年森の一年目

日光浴をするキタテハ(成虫越冬)

世話を始めてからまだ半年ちょっとですが、その短い間にも、百年森はしだいに良い自然環境になってきたと感じています。公園内の側溝など各所から持ってきて山積みされていた土を敷きならしたので、それに混じっていた外来植物などの種子がすごい勢いで次々に芽生えましたが、選択的な除草を丁寧に繰り返した結果、外来植物は大幅に減り、在来植物が優先する場所になりました。草で覆われ、実生木も生えてきたので、そのような環境を好む虫が増えました。それを目当てにやってくる上位の昆虫や爬虫類、鳥なども見られるようになっています。そのような変化を見られるのも、継続的に世話をしている楽しみのひとつです。

百年森の冬の活動

外来種除草作業

12月14日(土)は、毎月恒例の百年森の三団体合同活動でした。枯れた草の刈り取りなどの冬支度は11月30日の活動で済んでいるので、この日は残っている外来植物の除草を実施しました。例えばトキワツユクサは常緑性なので、冬の間も光合成をして茎や葉を伸ばします。ロゼットの形で、つまり地面に張り付くように葉を広げて光合成を続け、春以降の生長のために栄養を蓄える外来植物もあります。冬は多くの草木が枯れているし、邪魔する蚊などの害虫もいないので、外来植物を減らす作業には良い時期です。

百年森で除草したトキワツユクサなど

写真が百年森で除草した外来植物で、そのほとんどがトキワツユクサです。結実しない種類も種子を作る種類も生えていました。一度や二度の除草ではどうしても残ってしまい、油断すると勢いを取り戻すので、冬の間も時々チェックが必要です。

この日はその後に他の場所へも行き、別の外来野草のロゼットの掘り取りも実施しました。冬にやるべきことや、冬にやったほうが効果的なことはいろいろあります。

百年森の草刈り

百年森の草刈り

11月最後の活動日は好天に恵まれたので、井の頭 自然の会にも声をかけて、百年森の草刈りを実施しました。合同の活動日は12月にも予定されているのですが、その日が好天とは限りません。両会から計7名の参加でした。

昆虫などは越冬の準備ができたようで、ほぼ姿を消したので、春の芽生えがしやすいように、今回はすっきり目に草を刈りました。それでも、産卵を済ませ命を終えようとしているジョロウグモや、成虫越冬のクビキリギスなどが見つかりました。冬を越す虫たちのために、刈った草は複数箇所に積み置きました。

草刈り後の百年森

空気が冷たいため、汗をかくと作業後に冷えてしまいます。頑張らないようにと言ったのですが、皆とても頑張ってくれたので、近くの「ミズタマソウ保護エリア」の草刈りも含め、やりたかった作業をほぼ終えることができました。

でも、12月の合同活動でやることがなくなったのでは?という心配は要りません。冬の間にやっておくべきことはまだあります。

百年森 11月の合同活動

井の頭 自然の会と、百年森の合同活動を実施しました。このところ台風などで天気が悪い日が多く、活動可能かつ多くの人が参加できる日を見つけるのに苦労しています。今日の参加者もちょっと少なめの6名でした。

草刈りのようす
百年森の草刈り

作業のメインは百年森の選択的除草です。ここには生えていてほしくない外来植物を掘り取り、枯れ始めた在来植物を刈り取ります。外来植物はこれまで繰り返し除草してきたので、初夏から初秋に比べると、大幅に減りました。在来植物もほとんどが種子を作り終えて枯れ始めているので、来春の芽生えがしやすいよう、その多くを刈り取ったり抜き取ったりしました。先月の活動では、公園の他の場所ではほとんど見かけない野草が複数種類生えてきたのを確認しましたが、今日の活動でも複数の種類の若木を新たに見つけました。百年森の世話を始めてまだ半年ですが、徐々に多様性が高まってきているのを感じます。

人数が多くなかったので、今日は全部の範囲はできませんでした。年内には全域の草刈りを終える予定です。

作業後の百年森

右の写真が作業後のようすです。かなりの量の草を除去したにもかかわらず、すっきりしない、変わり映えがしない、という意見もあるかもしれません。でも、それが大事だと考えています。生き物最優先の場所ですから、それまで暮らしていた生き物が突然居場所を失うような草刈りは避けたいのです。刈り取った在来植物や拾った落ち枝は、生き物たちの隠れ場所になるよう、数カ所に積み置きました。気温もだいぶ下がってきたので、作業中に見かける虫の種類や数はだいぶ少なくなりましたが、日が暮れるころそばを通った人によると、草むらでたくさんの虫が鳴いていたそうです。

百年森 三回目の除草活動

6月22日(土)、井の頭かんさつ会と井の頭 自然の会の合同活動として、計10名で「百年森」の除草作業を実施しました。4月には更地だった場所ですが、いろいろな植物が芽生え生長してきたので、望ましくない植物を見分けて取り除く作業です。

除草作業中

三回目の除草なので、これまでとても多かった、ナガミヒナゲシ、アメリカセンダングサ、ヨウシュヤマゴボウなどの外来植物はだいぶ少なくなっていました。それでも前回見逃したり、その後に芽生えたものを丁寧に除草しました。こんなに外来植物が多いのは、管理ヤードだった時に公園のあちこちから持って来られ積み上げられていた土を、この場所を整地するとき敷き均したからです。その土の中におびただしい数の埋土種子が含まれていたわけで、井の頭公園にはそれだけ外来植物がたくさん生えているということです。

今回はカナムグラを減らす作業も行いました。カナムグラは在来植物ですが、つるを伸ばしてどんどん広がるので、他の植物が生えられるよう、カナムグラが生える範囲を制限しなければなりません。実際のところ、その作業のほうが外来植物の除草より大変でした。

増えてきた虫を観察

植物が次々にしかも大量に芽生えてきたときはどうなることかと思いましたが、何度か除草を繰返せば落ち着くことが分かりました。草が生えると、それを食べる虫が増え、虫が増えると、それを食べる生き物もやってきます。今後も、生き物たちにとって望ましい環境とはどんなものかを考えながら、除草作業を続けるつもりです。

 

 

名草の芽

A

公園内を見て回ったら、当会で保護活動をしている植物が芽を出していました。春が来たのを実感するときです。そのうちの6種類を載せてみましたが、植物の名前がお分かりでしょうか。花を見れば分かる人でも、芽生えは難しいと思います。でも、それらを一年中見守り、世話をしている我々には分かります。

B

ある植物を保護するには、そのライフサイクルを知ることが必要です。生長の各段階に何が必要で、どんなことが障害になるのか分かるからです。

 

花を見て名前が分かっても、その植物を分かったことにはなりません。ライフサイクルを知って初めて、その植物を分かったことになるのだと思います。そしてそうなると、芽吹きがとても嬉しく思えるのです。

C

ライフサイクルを知ることが重要なのは、防除しようとする外来植物も同じです。なぜ侵略的と言われるほど強いのか、その優れた能力が理解できます。そしてそれでも、弱点が無いわけではないことも分かります。

これら6種類の在来植物の名前はそのうち書きたいと思いますが、各写真のファイル名を見られる人には分かります。

D

E

F

 

年度最後の活動

今日は2018年度最後の活動日です。亜大富士山クラブから、かんさつ会メンバーより多くの参加がありました。今日が最後の参加になる四年生も二人来てくれました。その後を継ぐことになる三年生に我々が何を保全しようとしているのか理解を深めてもらうため、最近はできるだけ自然を観察しながら活動することを心がけています。前回は三角広場まで行き、その周辺に分布を広げている結実型のトキワツユクサなどの外来植物を除草しました。今回は、寒い日で花見客が心配したほどいなかったので、井の頭池の周りを見て歩きました。

ナガミヒナゲシを除草

本日のメインミッションは、池尻の園路脇を占拠していた外来種ナガミヒナゲシを除草し、そこに、となりの保護エリアで保護している在来種キランソウの一部を移植することでした。ナガミヒナゲシは、好きな人も多いのですが、それこそ”ケシ粒のような” 微小な種を大量に撒き散らして広がるので、道ばたに他の草が生えられなくなるのです。これまで除草に取り組むのを躊躇していたのですが、10人でやってみたら、あっという間でした。

移植したキランソウ

今後は、移植したキランソウを守るために、埋土種子から芽生えてくるナガミヒナゲシを除去し続ける活動が必要です。

亜大富士山クラブは、授業で保全活動に参加したのがきっかけになり、今の四年生により設立され、それに三年生も加わって、当会の保全活動に協力してくれるようになりました。2019年度もその活動が新四年生にしっかり引き継がれることになったのは、我々としても嬉しいかぎりです。